2018 年 27 巻 2 号 p. 125-128
感染性腹部大動脈瘤疑いで手術を施行し,術後巨細胞性動脈炎の診断に至った症例を経験したため文献的考察を加え報告する.症例は84歳,女性.以前より腹部大動脈の拡張を認めていたが,今回約1カ月持続する発熱を主訴に入院となった.CTにて,腹部大動脈に外膜の濃染像(Mantle sign)を伴う囊状瘤を認めた.感染性腹部大動脈瘤疑いで抗菌薬投与を開始し,いったん解熱し炎症反応も減少したため腹部大動脈人工血管置換術を施行した.術後第10病日に高熱が出現し炎症反応も上昇傾向を示した.術中大動脈壁組織の病理検査から巨細胞性動脈炎の診断に至りステロイドの投与を行ったところ解熱し炎症反応も改善した.本症例同様に手術をきっかけに巨細胞性動脈炎の診断に至った症例は珍しく,術前に鑑別に挙げることの重要性が示唆された.