日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
27 巻, 2 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
総説
  • 尾原 秀明, 松原 健太郎, 北川 雄光
    2018 年 27 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 2018/04/03
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    急性下肢虚血(acute limb ischemia: ALI)は,末梢動脈あるいはバイパスグラフトの急性閉塞による下肢血流の急激な減少であり,迅速かつ適切な治療が施されなければ肢のみならず生命予後不良となる疾患である.病因は塞栓症と血栓症に大別され,さまざまな背景疾患を有する.ALIの症状は急激で,下肢の疼痛,しびれ,冷感から虚血の進行とともに知覚麻痺,拘縮,不可逆性紫斑が出現する.身体所見と画像所見により重症度の判定と治療方針を決定する.不可逆的虚血と判断した場合には,救命を優先し,肢切断を躊躇しない.治療法は,薬物療法(速やかなヘパリンの全身投与),外科的治療,血管内治療,ハイブリッド治療があるが,いずれにおいても,術中血管撮影検査による病変評価と適切な追加治療が重要である.ALIは緊急の治療を要する重篤な疾患であり,各施設において施行可能な最善の初期治療を速やかに行うことが肝要である.

  • 和泉 裕一
    2018 年 27 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 2018/04/27
    公開日: 2018/04/27
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    本稿では,重症虚血肢治療における術前・術後の感染対策について述べた.感染合併の有無とその程度を考慮した重症虚血肢の治療戦略を示した.感染を伴う重症虚血肢に対して治療戦略を誤ると,感染の拡大を助長し虚血肢の状況を悪化させることになり,最終的には救肢のみならず救命できない結果となりうることから,術式,バイパス材料,吻合部位,術後抗菌薬,創傷処置などにおいて適切な判断が必要である.感染は,外科医にとって最も身近で切り離せない問題であるが,とくに重症虚血肢における感染対策は血行再建とともに重要な治療の鍵である.

講座
  • 寺師 浩人
    2018 年 27 巻 2 号 p. 77-79
    発行日: 2018/03/07
    公開日: 2018/03/08
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    1. 【急性創傷と慢性創傷の滲出液の違い】急性創傷の滲出液は創傷治癒促進に働き,慢性創傷の滲出液は創傷治癒遅延に働く.2. 【デブリードマンの種類】非侵襲的なものから侵襲的なものまでさまざまである.3. 【重症虚血肢に対するデブリードマンの留意点】デブリードマンには二種類ある.一つは末梢血行再建術後の創閉鎖のための壊死組織除去であり,もう一つは感染コントロールのための感染巣除去である.

  • 山岡 輝年
    2018 年 27 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 2018/03/30
    公開日: 2018/03/29
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    重症下肢虚血に対する血管内治療は,デバイスの進歩と手技の確立によって実臨床において広く受け入れているが,その適応判断は,複雑臨床背景や動脈病変の解剖学的状況を踏まえ決定していくことが必要である.ここでは重症症下肢虚血に対する血管内治療の適応・管理の概要と血管内治療の現状について記載する.

  • 中塚 秀輝
    2018 年 27 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 2018/04/25
    公開日: 2018/04/27
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    閉塞性動脈硬化症に代表される血管疾患は,病状の進行とともに安静時疼痛または潰瘍・壊死を伴う.とくに重症虚血肢の疼痛は強く,管理に難渋するため,薬物療法,交感神経節ブロック,硬膜外ブロック・末梢神経ブロックなどの区域麻酔,脊髄刺激電極,高気圧酸素療法などさまざまな治療を組み合わせて用いる.高齢者や重症心疾患を有する患者が多いため,循環系への影響が少ない治療が望ましい.区域麻酔は必要な範囲にのみ麻酔効果を発揮する点で有利であり,超音波ガイド下末梢神経ブロックでは効果を必要な部位に正確に限定させることができる.さらに体動時の痛みにも効果的である点で,オピオイドなどの全身投与による鎮痛に比べて非常に優れている.重症虚血肢の疼痛管理においては,薬物療法とともに,超音波ガイド下神経ブロックなどの区域麻酔との併用が有用であり,慢性化した場合には心理社会的要因も考慮して治療に当たる.

症例
  • 嘉山 貴文, 佐野 真規, 斉藤 貴明, 犬塚 和徳, 山本 尚人, 海野 直樹
    2018 年 27 巻 2 号 p. 69-72
    発行日: 2018/03/09
    公開日: 2018/03/08
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    症例は73歳女性.左下腿脱力しびれを主訴に近医を受診した.左臀部から大腿に圧痛を伴う非拍動性腫瘤を触知し左下腿筋群の筋力低下と脛骨神経・総腓骨神経領域の知覚障害を認めた.造影CT検査では左臀部から大腿下部に最大短径60 mmの血栓閉塞した遺残坐骨動脈瘤を認め膝窩動脈以下は大腿深動脈からの側副路により造影された.動脈瘤の圧迫による坐骨神経障害の診断で当科に紹介入院となった.全身麻酔下に腹臥位で動脈瘤を露出した.脛骨神経・総腓骨神経は動脈瘤に高度に癒着しており神経を温存しつつ可及的に瘤切除術を施行した.大腿部の血行再建は行わなかった.筋力低下,知覚障害の神経症状は改善し18日目に独歩退院した.遺残坐骨動脈瘤の症状には下肢虚血と瘤の圧迫による神経障害がある.下肢虚血に血行再建術が,神経障害に瘤切除術や瘤縫縮術が必要である.下肢の血行状態と神経学的所見を十分に評価し術式を選択することが重要である.

  • 田林 東, 金 一, 中島 隆之, 鎌田 武, 小泉 淳一, 熊谷 和也
    2018 年 27 巻 2 号 p. 73-75
    発行日: 2018/03/07
    公開日: 2018/03/08
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    今回,われわれは人工股関節全置換術後の骨セメントによって生じた総大腿動脈仮性瘤の1例を経験した.症例は83歳,女性.2016年11月,急速破壊性股関節症に対し右人工股関節全置換術を施行された.術後1カ月頃から貧血を認め,精査目的に施行された造影CTで右総大腿動脈仮性瘤の診断となった.術中所見にて,骨セメント突出部と一致した部位に総大腿動脈後壁破裂孔を認め,骨セメントの機械的刺激によって生じた仮性瘤であったと診断した.手術は人工血管を用いた右外腸骨動脈–総大腿動脈バイパスと骨セメントの切除を行った.人工股関節全置換術後の血管合併症は稀であると思われ,報告する.

  • 大井 正也, 石川 昇, 東田 隆治, 川口 聡
    2018 年 27 巻 2 号 p. 81-85
    発行日: 2018/03/16
    公開日: 2018/03/15
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    ステントグラフトのcollapseは稀な合併症とされているが1),このたびわれわれはNajutaおよびRelay Plusを用いたTEVARの後に,遅発性にcollapseを生じ追加治療を要した症例を経験した.症例は72歳の女性で,遠位弓部大動脈瘤に対してNajutaをZone 0から留置した後に,Relay PlusをZone 2から留置した.患者は術後206日目に急性心不全にて緊急入院となりステントグラフトのcollapseを認めたため,緊急的に再拡張を行った後に上行置換術を施行した.ステントグラフト治療後のgraft collapseは,稀ではあるものの致死的となりうる合併症であり,早急な対処が必要となる.大動脈弓の解剖学的評価と適切なデバイスおよび術式の選択により,bird-beakを予防する検討やNajutaに他のデバイスを内挿することへの留意が,このような合併症を回避できる可能性がある.

  • 村上 友梨, 藤岡 俊一郎, 森村 隼人, 王 志超, 戸口 幸治, 保坂 茂
    2018 年 27 巻 2 号 p. 87-90
    発行日: 2018/03/16
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は72歳女性.2年前に遠位弓部大動脈瘤に対してVALIANT(Medtronic, Santa Rosa, CA, USA)を用いて左右腋窩動脈間バイパスを併用した胸部ステントグラフト内挿術を施行された.術後CTではendoleakは認めないものの徐々に瘤径が拡大し,待機的手術予定であったが,その2カ月前に左胸痛にて救急搬送され,CT上,胸部大動脈瘤破裂の診断で左開胸による人工血管置換術を施行した.術中所見でも瘤内には明らかな血液の流入や新鮮血栓は認めず,瘤大弯側に小指頭大の破裂孔があり,その破綻した動脈壁からのoozingを認めるのみでendotensionによる瘤破裂と診断した.endotensionは,明らかなendoleakを認めない瘤拡大であり,グラフト素材がその発生に寄与していると考えられている.本症例のように破裂に至ることも稀ではなく,厳重な観察と早期の血管内治療追加も有用な戦略と考える.

  • 合志 桂太郎, 木谷 公紀, 高橋 章之
    2018 年 27 巻 2 号 p. 91-94
    発行日: 2018/03/21
    公開日: 2018/03/16
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    気管腕頭動脈瘻は気管切開後の合併症として発生頻度は低いが,非常に致死率が高い疾患である.大量失血や血液による気道閉塞などで手術加療に至れない症例も多い.症例は29歳,女性.15歳で気管切開を施行された.3年前に気道出血を発症し保存加療で軽快した既往があったが,詳細は不明であった.前医入院中の気管吸引時に新鮮血を認め,気管支鏡で拍動性出血を認めたために,当院へ緊急搬送された.来院時は一時止血された状態であり,造影CT,血管造影では明らかな出血源は同定できなかったが,Thin slice CTで腕頭動脈壁のわずかな不整を認め,気管支鏡で同部位の気管粘膜に潰瘍を認めた.さらに潰瘍底には発赤所見も認めたために,気管腕頭動脈瘻切迫穿孔と判断し,緊急で腕頭動脈離断術および気管形成術を施行した.一時止血された気管腕頭動脈瘻の出血源の同定に難渋することがあるが,今回気管支鏡検査が診断に有用であったので報告する.

  • 嵯峨根 正展, 杵渕 聡志, 遠藤 仁, 古川 浩, 土居 正知, 小林 俊也
    2018 年 27 巻 2 号 p. 95-98
    発行日: 2018/03/19
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は49歳,男性.慢性膵炎の急性増悪にて入院した際のCTにて上行大動脈壁に付着する腫瘤を認め,当科紹介となった.多発脳梗塞も発症しており,さらなる塞栓症のリスクが高いと判断し準緊急で手術の方針とした.上行大動脈を切開すると大動脈前壁に付着する20 mm大の赤色血栓を認め,容易に剝離可能であった.大動脈壁に肉眼上軽度の動脈硬化所見を認めた.病理学的にも血栓組織の診断であった.上行大動脈内の血栓は非常にまれであり,治療法についても一定の見解は得られていないが,塞栓症のリスクを考慮して早期の摘出術を施行し良好な結果が得られた.

  • 湯本 啓太, 松下 明仁, 角田 優, 服部 隆司, 三原 和平, 朝倉 利久
    2018 年 27 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 2018/04/03
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は77歳女性,発症時期不明のB型大動脈解離の既往がある.胸背部痛で当院に救急搬送され,慢性B型解離性胸腹部大動脈瘤の再解離と診断し,降圧安静治療を行った.胸部下行大動脈は大きく蛇行し,右胸腔内を走行していた.2週間で瘤径の急速拡大を認めたため,切迫破裂と診断した.BMI 39と高度肥満の高齢者であり,胸部下行大動脈の解剖学的特徴から胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)によるentry閉鎖と偽腔プラグ塞栓による治療を行った.術後1週間の造影CT検査で偽腔の血栓化を認めた.対麻痺等の術後合併症はなく,術後10日目に独歩で退院した.術後1年の造影CT検査では偽腔は縮小傾向であった.B型大動脈解離の遠隔期に開胸手術が困難な症例に対して,ステントグラフト治療は選択肢の一つであり,偽腔血流をコントロールする方法として偽腔プラグ塞栓法も有効と考えられた.

  • 海氣 勇気, 小林 平, 小澤 優道, 濱本 正樹
    2018 年 27 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 2018/04/03
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    二次性大動脈十二指腸瘻の多くは吐下血を契機に発見され,吐下血のない症例では診断に難渋することが多い.症例は66歳,男性.5年前,閉塞性動脈硬化症に対してY字型人工血管置換術を行った.発熱を主訴に当院へ緊急入院した.熱源精査のため造影CT検査を行い,人工血管周囲に軟部影と異所性ガス像を認めた.上部消化管内視鏡検査では十二指腸水平脚に人工血管の露出を認めた.便潜血検査は陽性であった.以上の結果から,二次性大動脈十二指腸瘻と診断した.明らかな吐下血を認めないため抗菌薬投与で感染の鎮静化を図った後に手術を施行した.十二指腸部分切除,人工血管部分置換,大網充填術を行った.術後に便潜血検査は陰性化していた.本例は二次性大動脈十二指腸瘻のうち,大動脈と直接の瘻孔形成を認めないGraft-enteric erosionにあたると考えられた.感染制御後に待機的手術を行い,感染の再燃なく経過した.

  • 寺園 和哉, 山本 裕之, 荒田 憲一, 松本 和久, 四元 剛一, 井本 浩
    2018 年 27 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 2018/04/10
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル オープンアクセス

    腕頭静脈静脈性血管瘤(brachiocephalic venous aneurysm: BVA)はまれな疾患であり,破裂や血栓塞栓症の合併が危惧される.症例は70歳女性,胸部異常陰影を指摘され当院紹介となった.造影CT検査にて腕頭静脈の囊状瘤を指摘されたが,無症状であり経過観察となった.しかし,経過中に瘤の拡大傾向(25×39×60 mm→28×47×77 mm)を認めたため手術を行った.胸骨正中切開時にのみ体外循環を使用,単純遮断下に瘤切除,自己心膜によるパッチ形成術を行った.術後は5カ月間の抗凝固療法行ったが,再発や血栓塞栓症の合併なく経過している.BVAの明確な手術適応はないが,囊状瘤で拡大傾向がある場合は外科的切除を考慮すべきである.

  • 中村 文, 井上 良哉, 稲垣 順大, 平野 弘嗣, 馬瀬 泰美, 徳井 俊也
    2018 年 27 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2018/04/24
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

    感染性腹部大動脈瘤疑いで手術を施行し,術後巨細胞性動脈炎の診断に至った症例を経験したため文献的考察を加え報告する.症例は84歳,女性.以前より腹部大動脈の拡張を認めていたが,今回約1カ月持続する発熱を主訴に入院となった.CTにて,腹部大動脈に外膜の濃染像(Mantle sign)を伴う囊状瘤を認めた.感染性腹部大動脈瘤疑いで抗菌薬投与を開始し,いったん解熱し炎症反応も減少したため腹部大動脈人工血管置換術を施行した.術後第10病日に高熱が出現し炎症反応も上昇傾向を示した.術中大動脈壁組織の病理検査から巨細胞性動脈炎の診断に至りステロイドの投与を行ったところ解熱し炎症反応も改善した.本症例同様に手術をきっかけに巨細胞性動脈炎の診断に至った症例は珍しく,術前に鑑別に挙げることの重要性が示唆された.

  • 中島 隆之, 佐藤 央, 金 一
    2018 年 27 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2018/04/23
    公開日: 2018/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    膝窩静脈静脈性血管瘤(PVA)は稀な疾患であり,肺塞栓症や血栓後症候群が初発症状であることが多い.膝窩部痛を呈したPVA症例は少数報告されているが,足首の疼痛を呈したPVA症例の報告はない.今回,PVAに関連した足首痛を呈した70歳,女性の症例を経験したので報告する.CTで膝窩静脈末梢側に径25×23 mmのPVAを認めた.手術所見では脛骨神経はPVAと腓腹筋の間で圧排されていた.PVAは径10 mmの小伏在静脈の静脈性血管瘤と共に切除し,小伏在静脈を用いた置換術により血行再建した.術後は抗凝固療法と弾性ストッキングによる圧迫療法を施行した.足首の疼痛は術直後より消失した.術後54カ月後の静脈造影では膝窩静脈は狭窄なく開存していた.足首の疼痛は膝窩静脈末梢側に発生したPVAに起因するものと考えられた.

  • 東 理人, 橋本 亘, 八巻 文貴, 當山 眞人, 蜂谷 貴
    2018 年 27 巻 2 号 p. 141-144
    発行日: 2018/04/25
    公開日: 2018/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    有症状の成人大動脈縮窄症患者に対して,ステントグラフト内挿術を施行し著効した.症例は70歳女性,数日前からの胸部圧迫感があり,造影CTで未治療の大動脈縮窄症を認めた.降圧薬を追加したところ,下肢冷感および全身倦怠感が出現したため中止し治療を検討した.高齢でありステントグラフト内挿術を選択した.手術は大動脈縮窄部位にステントグラフトを挿入した.縮窄部位の通過は問題なかったが,回収時にトップキャップがひっかかり通過困難であったが,アウターシースでステントを下から固定しながら通過させた.拡張直後から上下肢の血圧差は50 mmHgから10 mmHgと著明に改善した.術後より症状は改善し術後8日目に退院となった.術後5カ月の造影CTでは縮窄部はさらに拡張しており,ABIは右1.02,左1.06まで改善した.有症状の成人大動脈縮窄症に対して,ステントグラフト内挿術を施行し著効した1例を報告する.

  • 久良木 亮一, 吉田 尚平, 小野原 俊博
    2018 年 27 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2018/04/27
    公開日: 2018/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は,直腸癌術後に両側重症虚血肢を来した68歳男性.両側腸骨動脈閉塞病変に対し,自己拡張型ステント留置術を施行した.治療の際,ガイドワイヤーが内膜下を通過していた.経過観察目的に施行した造影CT検査で,左総腸骨動脈および外腸骨動脈に仮性動脈瘤を認め,ステント外側に造影剤が漏出していた.人工肛門造設後であり,ステントグラフト内挿術の方針とした.左総腸骨動脈起始部から外腸骨動脈遠位までGORE VIABAHNを内挿し,術後の造影CT検査ではステントグラフト外への造影剤漏出は認めず,仮性動脈瘤は退縮していた.閉塞病変への血管内治療,とくに外膜直下をガイドワイヤーが通過した際には,術後の仮性動脈瘤形成に留意する必要がある.このような症例では術後の画像検査が重要であり,仮性動脈瘤が判明した場合,GORE VIABAHN内挿は有効な治療法であると考えられた.

  • 尾花 正裕, 井上 龍也, 林 佑樹, 山本 知則
    2018 年 27 巻 2 号 p. 149-153
    発行日: 2018/04/27
    公開日: 2018/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    静脈うっ滞性潰瘍の治療は,静脈高血圧の改善と潰瘍に対する創傷管理が重要である.今回,再発を繰り返す足背部皮膚潰瘍に対して足底動静脈瘻と診断,コイル塞栓と陰圧閉鎖療法で治療し良好な経過を得たので報告する.症例は56歳女性,幼少期に足底部外傷の既往あり.25年前より足背部潰瘍を生じ,治癒と再発を繰り返していた.今回も潰瘍が治癒せずに当院へ来院した.超音波検査で後脛骨静脈拡張と静脈血流速度の増加を認め,下肢血管CT検査では足底動静脈瘻を認めたため,足底動静脈瘻によるうっ滞性潰瘍と診断しコイル塞栓術を施行した.術後は陰圧閉鎖療法(Vacuum-assisted closure,以下VAC療法)を併用し潰瘍部は閉鎖,治癒した.現在,再発は認めていない.足底動静脈瘻が誘因となった難治性皮膚潰瘍に対しコイル塞栓による瘻孔閉鎖と潰瘍部陰圧閉鎖療法は,早期潰瘍治癒に非常に有効な治療法であると思われた.

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