2018 年 27 巻 4 号 p. 293-296
膝窩静脈性血管瘤は稀な疾患であるが,時として致死的な血栓塞栓症をきたす場合がある.症例は19歳男性.運動時に右臀部を強打し,同部位に巨大な血種を形成,数日後に当院整形外科に入院し右臀筋内血種除去術を施行された.手術翌日に,肺塞栓症に加え脳梗塞を発症した.未分画ヘパリンによる抗凝固療法を開始したが,再度重篤な肺塞栓および脳梗塞を発症し,心停止をきたし脳浮腫に至った.精査の過程で卵円孔の開存,右大腿から膝窩上部への深部静脈血栓と血栓を伴う右膝窩静脈性血管瘤(3×4 cm)を認めた.塞栓源の除去に加え今後の再発予防目的に当科に紹介となり,膝窩静脈性血管瘤切除術を施行した.術後は,血栓塞栓症の再発は認めなかった.膝窩静脈性血管瘤は致死的な血栓塞栓症の原因となることがあるので,早期の適切な治療介入が必要である.抗凝固療法のみでは治療が不十分となることもあるので,速やかな外科的介入を考慮する必要がある.