抄録
ネコ免疫不全ウイルス(FIV)のRevタンパクはenv遺伝子の3'末に存在するrev responsive element(RRE)を介して, 細胞質内におけるFIVのアンスプライス及びシングルスプライスmRNAの蓄積を調節し, ウイルスの構造タンパクの発現を特異的に活性化している. 今回我々は, ウイルスの増殖サイクル及び, 細胞指向性に対するrev遺伝子の役割を検討するため, Revタンパク発現プラスミドを作製し, クロラムフェエコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)アッセイ法を用いて, ネコ及び霊長類由来株化細胞内におけるRevトランスアクチベーションの比較を行った. その結果, 霊長類由来株化細胞内におけるRevの機能はネコの株化細胞内のそれと比べ, 明らかに低下していることが認められた. これらのことは, FIV Revの完全な機能発現のためには何等かのネコ細胞内に存在する物質が必要である可能性を示しており, また, Revの働きがウイルスの細胞指向性を決定する一つの重要な役割を担っていることが示唆された.