2020 年 39 巻 3 号 p. 7-20
本稿は,ブランドと想像力について,想像力とは何かを問うとともに,ブランドと想像力について新たな研究パラダイムを構築するための消費者行動モデルを提案する理論的論文である。研究レビューから,想像力が重要な概念とされながらも,マーケティング論ではあまり扱われてこなかったこと,諸学での想像力についての考察で共通していることとして,想像力が人間の行為として重要であること,感情・思考・感覚・知覚・記憶などと関連しながら,同時にこれらを統合する力として働いていること,想像力が人間特有の遺伝形質であり,脳神経科学から再帰性という概念を用いることによって想像力の在り方がよりよく理解できることなどを明らかにした。そのうえで新たなブランドの定義を示したうえで,ブランドと想像力についての新たな研究パラダイムを提案して実証研究への道筋を示した。