2021 年 41 巻 2 号 p. 46-59
デジタル変革により流通機能の脱構築が進行している。これを受けた小売現場では,多様な流通ビジネスモデルが展開されている。こうしたビジネスモデルを背後に,消費者には様々な機能を兼ね備えたモバイルアプリが提供されている。消費者に提供される製品カテゴリーの総合性と提供される機能の統合性を軸にすると,多様なモバイルアプリの競争的な類型化が可能になる。マス・マーケットを対象とすると,製品カテゴリーの総合性と機能の統合性を高く保持するリーダー型のモバイルアプリの存在が見いだせる。逆に個のマーケットを対象とすると,それらの軸の逆方向に,市場特化型のモバイルアプリと機能特化型のモバイルアプリが見いだせる。本稿では,それぞれの流通ビジネスモデルを反映するモバイルアプリの競争類型を念頭におき,モバイルアプリに期待される買物のスマートさと買物の楽しさを中心にモバイルアプリの利用実態とその認識に関する調査結果を報告する。