2025 年 35 巻 3 号 p. 70-85
『日本語話題別会話コーパス:J-TOCC』に収録された15話題を対象に,品詞構成と語種構成という古典的な文体の計量指標を「話題」という場面に適用し,コレスポンデンス分析を通じて相互の対応関係を検討した.その結果,「03旅行」「07学校」など経験を語る話題では具体的な時空を出発点として話が展開される傾向があるため,名詞が多用されている一方,「12夢・将来設計」「13マナー」のような社会的・抽象的な話題では,行為という観点から話が進むため,動詞が話題の中心になりやすいことが分かった.さらに,「10動物」「01食べること」といった主観的な印象に基づく話題では形容詞系を起点として談話が展開されることが観察された.語種の観点でも,新しい概念や海外起源の要素が多い「08スマートフォン」「04スポーツ」では外来語,社会的・抽象的な「12夢・将来設計」「15日本の未来」では漢語,日常生活に基づく「10動物」「13マナー」では和語が相対的に優勢となるプロットが得られた.