2020 年 28 巻 2 号 p. 48-55
イソベレラールはRussula属およびLactarius属の数種が生産する様々な生理活性を持つ揮発性物質である.しかし,両属の分類群におけるイソベレラールの生産性と系統関係との関連性については不明である.本研究において多くの両属種の子実体におけるイソベレラール含有量をUPLC-MS/MSにより分析した.その結果,イソベレラール生産能を有するRussula属32種およびLactarius属2種を新たに見出すとともに,Russula属内シロハツ節およびクサハツ節に分類されるきのこ種がイソベレラール高生産性を有することを明らかにした.また,イソベレラールはTrichoderma属やGliocladium属種の胞子発芽を顕著に阻害した。このことから,イソベレラールは子実体内への菌寄生性菌類の侵入に対する防御因子としても作用している可能性が示唆された.