2020 年 28 巻 3 号 p. 100-106
Hericium erinaceum(ヤマブシタケ)は食用キノコの一種で,神経保護や抗炎症性,抗酸化性特性など様々な薬理作用を示すことが報告されてきた.我々は,ヤマブシタケの水抽出物が歯周病原性細菌Eikenella corrodensのバイオフィルム形成を阻害することを発見した.しかし,メタノール抽出物からは抑制効果は見られなかった.ヤマブシタケのバイオフィルム阻害効果は用量依存的に見られ,それはE. corrodensに対する殺菌作用によるものではなかった.ヤマブシタケの抽出物を硫安沈殿により分画したところ,70%画分から阻害活性が見られた.この画分を熱処理したところ,バイオフィルムの阻害は完全にはなくならなかった.これらのことから,部分的に熱に安定なタンパク質性の成分がバイオフィルムの阻害に関与することが示唆された.さらに,この画分を限外ろ過によって分画を行った.その結果,分子量が60-100 kDa 程度のタンパク質がE. corrodensのバイオフィルムを阻害することが示唆された.さらに,ヤマブシタケの抽出物が一旦形成されたバイオフィルムを分解する能力があることも示唆された.