抄録
ヒラタケ子実体を構成する組織や細胞の微細構造を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察するためには樹脂包埋試料を用いる.しかし,用いる樹脂に添加する加速剤の有無が細胞内微形態に与える影響について詳細に調べた報告はない.そこで本研究ではQuetol 812樹脂を用いて,樹脂浸透過程における加速剤DMP-30の有無がTEM像に与える影響を評価した.その結果,加速剤の有無に関わらず樹脂は正常に重合し,超薄切片の作製も可能であった.しかしTEM観察の結果,加速剤無添加の場合,添加した場合と比較して全体的に細胞膜,及び,細胞小器官の膜のコントラストが低下した.ミトコンドリア,また,ほとんどの核膜,粗面小胞体は膜構造を認めることが不可能であった.従って,きのこ子実体の細胞内の膜を対象にした解析をするにあたっては,加速剤を添加した混合樹脂を常に用いることが適正であると思われた.