日本きのこ学会誌
Online ISSN : 2432-7069
Print ISSN : 1348-7388
29 巻, 3 号
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  • 熊田 淳, 小川 秀樹, 齋藤 直彦, 大槻 晃太
    2021 年 29 巻 3 号 p. 89-94
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    福島原発事故後に生育した10年生コナラ萌芽木は,樹皮部と材部の放射性Cs濃度比が1.9:1で,樹皮部の蓄積率は約28%であり,フォールアウトの影響を直接受けたコナラ立木における樹皮部の蓄積率が90%とする報告と異なった.樹幹の高さ1 ~ 3 mの範囲では,1 m位置の放射性Cs濃度が高い傾向が見られた.また,原木の放射性セシウム濃度に対する太枝部,および幹部の樹皮部と材部の濃度との相関を求めた結果,材部との相関(R2 = 0.875)が最も高かったことから,原発事故後に萌芽したシイタケ原木の簡易な調査方法として,立木の一番玉位置の材部で判定する手法の有効性が示唆された.また,同一林分内の原木の放射性セシウム濃度は,鉱質土壌の交換性K濃度と負の相関(R2 = 0.731)を示したことから,一般的に交換性K濃度が低い斜面上部の立木から検体を採取することにより林分の過小評価を軽減できる可能性を見いだした.
  • 岩本 和子, 福田 泰久, 白坂 憲章
    2021 年 29 巻 3 号 p. 95-102
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    市販シイタケ子実体よりGABA生成に関与する酵素を精製し、その特性について調べた。収率9.28%、精製倍率7.14倍で、電気泳動的に単一の酵素が得られた。得られた酵素の最大活性はpH 6.0で37℃のときに観察され、pH 4.0 - 7.0付近で37℃まで安定であった。金属化合物の影響については、AgClとHgCl2で活性が阻害され、LiClでは活性が促進された。基質特異性については、L-グルタミン酸の他に、L-アスパラギン酸、L-2-アミノアジピン酸、DL-ノルバリンに対しても活性が見られた。精製酵素のN-末端アミノ酸配列を解析し、相同性をForestGENで検索したところ、ホスファチジルセリンデカルボキシラーゼ (PSD) と高い相同性を示した。シイタケのGABA生成に関与する酵素をコードする遺伝子のクローニングを行ったところ、PSD活性が確認されている既知の他種由来PSDとの相同性は低かった。
  • 尾崎 佑磨, 霜村 典宏
    2021 年 29 巻 3 号 p. 103-108
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    ヒラタケ子実体を構成する組織や細胞の微細構造を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察するためには樹脂包埋試料を用いる.しかし,用いる樹脂に添加する加速剤の有無が細胞内微形態に与える影響について詳細に調べた報告はない.そこで本研究ではQuetol 812樹脂を用いて,樹脂浸透過程における加速剤DMP-30の有無がTEM像に与える影響を評価した.その結果,加速剤の有無に関わらず樹脂は正常に重合し,超薄切片の作製も可能であった.しかしTEM観察の結果,加速剤無添加の場合,添加した場合と比較して全体的に細胞膜,及び,細胞小器官の膜のコントラストが低下した.ミトコンドリア,また,ほとんどの核膜,粗面小胞体は膜構造を認めることが不可能であった.従って,きのこ子実体の細胞内の膜を対象にした解析をするにあたっては,加速剤を添加した混合樹脂を常に用いることが適正であると思われた.
  • 佐藤 竜太, 尾崎 佑磨, 北村 直樹, 一柳 剛, 會見 忠則, 霜村 典宏
    2021 年 29 巻 3 号 p. 109-112
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    オオワライタケは幻覚や幻聴症状を誘起する毒きのこである.近年,本きのこ種が生産するジムノピリンの生理・薬理活性作用に関する研究が行われている.本研究では,ジムノピリンの抽出に必要とされるオオワライタケ子実体を安定供給することを目的に,子実体生産技術の開発を目指した. 10%(v/v)米ぬか含有ブナ木粉培地で,菌糸体を培養した後,注水処理,低温処理および覆土処理をした.その結果,低温処理や注水処理では子実体は形成しなかったが,覆土処理で菌糸塊および子実体が安定して形成した.子実体形成は10 - 20%米ぬか含有培地において認められたが,0%および30%以上含有培地では認められなかった.覆土処理した培地を明所下で培養すると高い収量性と正常子実体形成が認められた.以上の結果にから,オオワライタケを安定生産するためには,10%米ぬか含有ブナ木粉培地で培養した後,覆土処理し,明所下で培養する方法が有効であると思われた.
  • 田淵 諒子, 奥田 康仁, 牛島 秀爾, 福島(作野) えみ
    2021 年 29 巻 3 号 p. 113-118
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    アラゲキクラゲやキクラゲは近年生産量・消費量ともに拡大しているきのこであるが,日本国内では共に統計上「きくらげ(類)」として扱われており,流通量の9割が中国産である.本研究では,日本産アラゲキクラゲ,中国産アラゲキクラゲおよび中国産キクラゲ乾燥商品について,24種類の無機元素含有量を調査した.その結果,20元素は菌種または生産地,あるいはその両方により含有量に有意差が認められた.24元素中19元素は中国産キクラゲが最も高含有であった.次いで,多量元素のK, Mg, P, Caでは日本産アラゲキクラゲが,微量元素のFe, Mn, Cr, Al, Pbなどは中国産アラゲキクラゲが高含有であった.重回帰分析の結果,18種類の元素の含有量は産地よりも菌種の影響を受けることが示唆された.
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