抄録
カワラタケ菌糸によるきのこ麹を調製し,発酵豆腐を製造した.きのこ麹のプロテアーゼ活性は346 Uであった.きのこ麹に蒸留水を合わせた発酵種に豆腐を漬け込み4,10,20,30℃で発酵を行った発酵豆腐は,発酵日数の経過及び高温に伴い豆腐の形が崩れた.発酵1日目では豆腐からブナシメジの味と香りが感じられた.特に10℃で1日間発酵させた発酵豆腐は,ブナシメジの風味のみならず,旨味を呈した.さらに,栄養面ではグルタミン酸やアラニンが増加し,機能面では抗酸化能が増加した.きのこの風味は,きのこの代謝により豆腐に存在するリノール酸から1-オクテン-3-オールへの生成によることが推察される.きのこ麹を発酵種として食品へ利用することにより,嗜好面,栄養面,機能面の全てが向上した豆腐製造の可能性が見出された.