抄録
イネ科牧草に感染する真菌エンドファイトが産生するマイコトキシンによる草食家畜の中毒は,アメリカやニージーランドで大きな問題となっている.我が国では,1997 年から1998 年にかけて,アメリカから輸入したペレニアルライグラスストローによる牛および馬のエンドファイト中毒が発生した.これを契機に,輸入業者の多くがストローのエンドファイト毒素濃度チェックを実施しているが,その後もエンドファイト中毒が散発している.本稿では,我が国で発生したエンドファイト中毒について概説するとともに,エンドファイト中毒予防上の問題点,エンドファイトが産生するマイコトキシンの畜産物への残留の可能性等について考察する.