農研機構研究報告
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原著論文
サトウキビ野生種と製糖用品種との種間雑種を利用して作出した 熊毛地域向け株出し多収品種「はるのおうぎ」
服部 太一朗 寺島 義文境垣内 岳雄寺内 方克樽本 祐助安達 克樹早野 美智子田中 穣石川 葉子梅田 周松岡 誠杉本 明
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2019 年 2019 巻 2 号 p. 21-44

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抄録

「はるのおうぎ」は,農研機構九州沖縄農業研究センターおよび国際農林水産業研究センターが共同育成した,萌芽性に優れる株出し多収のサトウキビ品種である.鹿児島県熊毛地域を普及見込み地域として2019 年3 月に品種登録出願した.本品種は,サトウキビ製糖用品種と野生種との種間雑種で株出し多収性を特徴とする飼料用サトウキビ品種「KRFo93-1」を種子親,早期高糖性を特徴とする製糖用品種「NiN24」を花粉親とする交配に由来し,株出し多収性と高糖性を重視した選抜を経て育成された.萌芽性は“極高”であり,萌芽率は熊毛地域の主要品種「NiF8」を常に上回る.分げつ性は“強”であり,熊毛地域では原料茎数が「NiF8」の1.4 倍から2.0 倍に達する.一茎重は「NiF8」より軽いが,茎数が多いため,原料茎重は春植え,株出しともに「NiF8」に比べて多い.甘蔗糖度は「NiF8」と同程度である.原料茎重と甘蔗糖度の結果から,可製糖量は春植え,株出しともに「NiF8」を大きく上回る.また,耐倒伏性に優れるため機械収穫しやすく,機械収穫後の萌芽も良好である.株出し単収が減少傾向にある熊毛地域において,単収の回復に寄与することが期待される.

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