日本食品科学工学会誌
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羅漢果配糖体の甘味特性およびその改善
村田 雄司吉川 慎一鈴木 靖志杉浦 正毅乾 博中野 長久
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2006 年 53 巻 10 号 p. 527-533

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抄録

近年,生活習慣病の予防の面で砂糖以外の甘味料への需要が急増しているが,サッカリンなどの人工甘味料は安全性の観点からその利用が規制される傾向にある.これに対して甘草抽出物やステビア抽出物などの天然の甘味料は安全性も高く砂糖に替わるものとして注目されているが,その甘味質は十分なものではないものが多い.
本研究は最近注目されている植物性の天然甘味料の一つ羅漢果を取り上げ,その甘味成分である4種のトリテルペン配糖体(mogrosideV,11-oxo-mogrosideV,mogrosideIVおよびsiamenosideI)について甘味質を評価した.その結果,いずれの配糖体もレバウディオサイドA(ステビア抽出物),グリチルリチン酸ジカリウム(甘草抽出物),サッカリンナトリウムと比較して,砂糖に近い良質な甘味特性を示すことが明らかとなった.
さらに,完熟果実を用いれば,工場レベルでの比較的簡単なクロマト操作だけで,(1) 苦み (2) 後引き (3) しつこさ (4) くせ (5) 渋味 (6) 刺激 (7) すっきり感 (8) まろやかさのいずれの要素についても良好な甘味特性を有する羅漢果甘味配糖体濃縮物(甘味配糖体合計含有率 : 約35%)が得られた.したがって,このような羅漢果甘味配糖体濃縮物は,飲料類,菓子類,調味料,卓上甘味料などの食品用の甘味素材として極めて有用であると考えられる.
ついで,羅漢果の主甘味成分であるmogrosideVに殿粉を糖供与体として酵素転移させ,糖化型アミラーゼで糖鎖調製した部分分解グリコシル化mogrosideVの甘味改善効果について調べた.その結果,mogrosideVに付加したグルコース残基数が1~3分子と増加するにしたがい,甘味強度は低下傾向を示したが,甘味質が一段と改善できることがわかり,なかでもmogrosideV+3glcは砂糖が示す甘味特性とほぼ一致する域に達した.したがって,本部分分解グリコシル化mogrosideVは,食品添加物として登録する必要はあるが,新しい甘味素材として大きく期待される.

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© 2006 日本食品科学工学会
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