日本食品科学工学会誌
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53 巻, 10 号
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報文
  • 村田 雄司, 吉川 慎一, 鈴木 靖志, 杉浦 正毅, 乾 博, 中野 長久
    2006 年 53 巻 10 号 p. 527-533
    発行日: 2006/10/15
    公開日: 2007/09/29
    ジャーナル フリー
    近年,生活習慣病の予防の面で砂糖以外の甘味料への需要が急増しているが,サッカリンなどの人工甘味料は安全性の観点からその利用が規制される傾向にある.これに対して甘草抽出物やステビア抽出物などの天然の甘味料は安全性も高く砂糖に替わるものとして注目されているが,その甘味質は十分なものではないものが多い.
    本研究は最近注目されている植物性の天然甘味料の一つ羅漢果を取り上げ,その甘味成分である4種のトリテルペン配糖体(mogrosideV,11-oxo-mogrosideV,mogrosideIVおよびsiamenosideI)について甘味質を評価した.その結果,いずれの配糖体もレバウディオサイドA(ステビア抽出物),グリチルリチン酸ジカリウム(甘草抽出物),サッカリンナトリウムと比較して,砂糖に近い良質な甘味特性を示すことが明らかとなった.
    さらに,完熟果実を用いれば,工場レベルでの比較的簡単なクロマト操作だけで,(1) 苦み (2) 後引き (3) しつこさ (4) くせ (5) 渋味 (6) 刺激 (7) すっきり感 (8) まろやかさのいずれの要素についても良好な甘味特性を有する羅漢果甘味配糖体濃縮物(甘味配糖体合計含有率 : 約35%)が得られた.したがって,このような羅漢果甘味配糖体濃縮物は,飲料類,菓子類,調味料,卓上甘味料などの食品用の甘味素材として極めて有用であると考えられる.
    ついで,羅漢果の主甘味成分であるmogrosideVに殿粉を糖供与体として酵素転移させ,糖化型アミラーゼで糖鎖調製した部分分解グリコシル化mogrosideVの甘味改善効果について調べた.その結果,mogrosideVに付加したグルコース残基数が1~3分子と増加するにしたがい,甘味強度は低下傾向を示したが,甘味質が一段と改善できることがわかり,なかでもmogrosideV+3glcは砂糖が示す甘味特性とほぼ一致する域に達した.したがって,本部分分解グリコシル化mogrosideVは,食品添加物として登録する必要はあるが,新しい甘味素材として大きく期待される.
  • 澤田 小百合, 弥永 由里, 田代 操
    2006 年 53 巻 10 号 p. 534-541
    発行日: 2006/10/15
    公開日: 2007/09/29
    ジャーナル フリー
    1. シロハナマメα-アミラーゼインヒビター(SAI-2)は,MAI-2と酵素化学的性質及び物理化学的性質が類似しており,同一のサブユニット構造をとることから,MAI-2と同一の構造である可能性が示唆されている.
    そこで既に構造を決定しているMAI-2と比較しつつSAI-2の一次構造を検討した.
    (1)SAI-2は,αとβサブユニットに分離後N末端アミノ酸配列分析を行いその単一性を確認した.また,SAI-2,MAI-2それぞれのサブユニットについてアミノ酸分析を行ったところ,両AIのそれぞれ対応するサブユニットのアミノ酸組成は類似していた.
    (2)SAI-2とMAI-2のアミノ酸配列をペプチドマップ法にて比較したが,両AIのペプチドマップはα及びβサブユニットともに一致しなかった.しかしながら,αサブユニットではV8プロテアーゼ消化,βサブユニットではキモトリプシン消化後の各フラグメントについてN末端アミノ酸配列分析を行ったところ,両AIの全アミノ酸配列は一致した.
    (3)SAI-2とMAI-2の糖鎖組成は,両AIのアミノ酸配列が一致するにもかかわらず異なっていた.
    2. 70℃,pH 5.0における安定性をTAI, UAI, SAI-2, MAI-2の4種のAIについて検討したところ,アミノ酸配列が等しいSAI-2とMAI-2が同じ傾向を示し,同様の関係にあるTAIとUAIが同じ傾向を示した.しかし,一次構造の異なる二組のグループ間ではSAI-2,MAI-2グループの方がTAI, UAIグループより安定であった.従って熱安定性は,AI間における少数のアミノ酸置換により変動するものと考えられた.
  • 翁 武銀, Hamaguchi Patricia Yuca, 田中 宗彦
    2006 年 53 巻 10 号 p. 542-547
    発行日: 2006/10/15
    公開日: 2007/09/29
    ジャーナル フリー
    pH 7~11において,すり身フィルムの性状に及ぼすPGA添加の影響とフィルム形成メカニズムを検討した.PGA添加によりすり身フィルムの機械的性質が改善されたが,合成プラスチックフィルムには及ばなかった.アルカリ性側特にpH 11で作成したフィルムでは,フィルムタンパク質の有効性リジン量の減少(表1),可溶化率の低下(表1),MHCの減少(図2),さらにいずれのタンパク質変性剤溶液にも溶解しない不溶性画分の増加(図1)が認められた.これらのことから,アルカリ性ですり身タンパク質MHCのリジン残基のε-NH2基とPGAのマンヌロン酸エステル間の架橋反応によりフィルムの機械的性質の改善がもたらされることが示唆された.さらに,すり身フィルムの水に対する溶解性,α-キモトリプシンによるタンパク質消化性に,PGAの添加が特に顕著な影響をもたらさなかったことから,すり身タンパク質フィルムの特徴である生分解性・可食性はPGA添加により失われないことが認められた.本研究で使用したPGA添加量は,フィルム中の濃度が食品添加物としての1%以下という使用範囲を超えてしまう.今後はフィルムTSのさらなる向上のほかに,PGA添加量を抑えて同様の効果を得る方策を検討する必要がある.
研究ノート
  • 小林 健治, 原 安夫, 勝部 拓矢
    2006 年 53 巻 10 号 p. 548-550
    発行日: 2006/10/15
    公開日: 2007/09/29
    ジャーナル フリー
    水道水を原水として隔膜電解槽で電気分解して得られた電解水で希釈した含水エタノールで桑葉成分の抽出について検討を行い以下の結果を得た.
    (1)DNJの抽出量は酸性電解水pH 4で水道水に対して3%程増加したが,α-グルコシダーゼ阻害活性は酸性電解水pH 4,pH 5共に10%高い活性を示した.
    (2)DPPHラジカル消去能は酸性電解水,アルカリ性電解水共に原水に対して増加し,その増加量は電解強度に比例していた.
  • 柴田 満穂, 浜 初美, 今井 眞美, 豊田 活
    2006 年 53 巻 10 号 p. 551-554
    発行日: 2006/10/15
    公開日: 2007/09/29
    ジャーナル フリー
    粉乳の遊離脂肪の測定法における抽出,分離,回収および溶媒留去の操作について,数種類の粉乳試料および既知量の脂肪を吸着させた擬似遊離脂肪含有粉を用いて実験的に検討した.
    その結果,四塩化炭素では粉乳の遊離脂肪は振とう回数130回/min, 抽出時間3分,残留物洗浄回数2回の比較的緩和な条件で短時間に抽出され,約90%の回収率が得られることを確認した.さらに擬似遊離脂肪含有粉を用いた検討から,本法は粉乳の遊離脂肪の測定法として妥当であることを確認した.
    次に,四塩化炭素に替わる溶媒の検討を行い,環境や作業者に安全なn-ヘキサンが四塩化炭素と同等であることを確認した.
    以上より,粉乳中の遊離脂肪測定について実用的な操作法の条件を設定し,またn-ヘキサンが代替の抽出溶媒として使用可能であるとの結論を得た.
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