日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
報文
可食性すり身フィルムの性状に及ぼすアルギン酸プロピレングリコールエステルの影響
翁 武銀Hamaguchi Patricia Yuca田中 宗彦
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 53 巻 10 号 p. 542-547

詳細
抄録

pH 7~11において,すり身フィルムの性状に及ぼすPGA添加の影響とフィルム形成メカニズムを検討した.PGA添加によりすり身フィルムの機械的性質が改善されたが,合成プラスチックフィルムには及ばなかった.アルカリ性側特にpH 11で作成したフィルムでは,フィルムタンパク質の有効性リジン量の減少(表1),可溶化率の低下(表1),MHCの減少(図2),さらにいずれのタンパク質変性剤溶液にも溶解しない不溶性画分の増加(図1)が認められた.これらのことから,アルカリ性ですり身タンパク質MHCのリジン残基のε-NH2基とPGAのマンヌロン酸エステル間の架橋反応によりフィルムの機械的性質の改善がもたらされることが示唆された.さらに,すり身フィルムの水に対する溶解性,α-キモトリプシンによるタンパク質消化性に,PGAの添加が特に顕著な影響をもたらさなかったことから,すり身タンパク質フィルムの特徴である生分解性・可食性はPGA添加により失われないことが認められた.本研究で使用したPGA添加量は,フィルム中の濃度が食品添加物としての1%以下という使用範囲を超えてしまう.今後はフィルムTSのさらなる向上のほかに,PGA添加量を抑えて同様の効果を得る方策を検討する必要がある.

著者関連情報
© 2006 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top