生地乾燥モデルとして生地-空気界面で吸着と脱着を伴う水の拡散モデルを提案し,モデルに基づいて各乾燥温度,各時間での生地水分を計算した.また,各乾燥温度および時間における生地重量を測定し,生地乾燥プロセスへのモデルの適用を実験的に確認するとともに,モデルを用いて生地内部の水の分布への乾燥の温度,生地の厚みの影響を検討した.以下,得られた事項を示す.
1)本報で提案したモデルに基づいて計算した各温度,各時間での生地中の水の平均濃度は,生地の乾燥にて得られた各温度,各時間での生地重量の測定結果から算出した生地中の水の平均濃度とほぼ一致させることができた.
2)生地の乾燥において,乾燥温度が高くなると,得られる生地の内部における水の濃度は,中心部分と表面部分との差が大きく,水の蒸発による体積膨張に起因する米菓の膨化では,均一でソフトな焼き上がりを得るために,低温乾燥が効果的と考えられた.
3)厚みの薄い生地では,厚みの厚い生地と比較して,乾燥による生地内部の水の濃度分布が均一になりやすく,このことが,一回の連続乾燥(寝かせ工程不要)を可能にしているものと考えられた.