日本食品科学工学会誌
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果実酢のモデル発酵試験における脂肪酸の変化とシス-バクセン酸の検出
藤森 正宏柚木 恵太佐藤 光由塚本 義則大西 正男
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2008 年 55 巻 11 号 p. 529-534

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抄録

ブドウおよびリンゴ果汁を原料とする果実酢のモデル発酵試験を行い,各発酵段階における脂肪酸成分を分析した.
(1)ベリーA種のワインでは,果汁と比べ,相対的にC16 : 0酸とC18 : 0酸の割合の増加ならびにC18 : 2酸とC18 : 3酸の減少が認められた.このワインを原料とするブドウ酢の脂肪酸成分の変化は大きくなかったが,C18 : 1酸の増加が特徴的であった.
(2)甲州種のワインの脂肪酸組成は,果汁のそれと類似したが,ベリーA種とはやや異なった.しかし,このブドウ酢は,ベリーA種のブドウ酢と質的および量的に類似した脂肪酸成分となった.
(3)リンゴ酒では果汁と比べ,相対的なC18 : 1酸の増加とC18 : 2酸の減少が観察された.このリンゴ酒を原料とするリンゴ酢の脂肪酸成分の変化は,ブドウ酢と同様にC16 : 0酸とC18 : 0酸の増加であった.
(4)このように原料果汁は,それぞれ固有の脂肪酸組成を有していたが,果実酢になるといずれも類似した脂肪酸成分となった.
(5)キャピラリGC分析の結果,酢酸発酵で酢酸菌体由来のC18 : 111酸が,果実酢中に移行することが示された.
(6)C18 : 111酸は市販10種の果実酢中にも検出され,C18 : 111酸/(C18 : 19酸+C18 : 111酸)比を算出すると0.07~0.59であった.

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© 2008 日本食品科学工学会
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