日本食品科学工学会誌
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技術論文
市販キットを用いたコムギ加工食品からのDNA抽出法の比較
藤田 由美子村上 恭子原口 浩幸
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2012 年 59 巻 8 号 p. 414-421

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抄録

コムギのDNA品種識別を行うために多様なコムギ加工食品に適用できる DNA 抽出法を比較検討した.3カ所の実験施設において,3種類の市販キット(DNeasy Plant Mini Kit,Genomic-tip 20/G,GM quicker 3)を用い,12種類のコムギ加工食品から DNA 抽出を行った.その結果,いずれの実験施設でも,3種類の抽出法によりすべての食品から DNA が抽出されたが,Genomic-tip 20/G のみ,すべての食品について O.D.260 nm/O.D.280 nm 値が1.7以上の高純度な DNA 溶液が得られた.いずれの実験施設でも,3種類の抽出法によって得られたすべての DNA 溶液から DNA マーカーによってコムギ由来の DNA が検出された.品種識別マーカーの一つである外国産コムギ検出マーカーでは,一部の食品において,実験施設によって増幅産物が得られないものや,増幅パターンのばらつきが見られた.食品の種類によってコムギ由来の DNA 量が異なることや,複数品種の DNA が混在していることから,特定品種の遺伝子型を検出する本マーカーでは検出が困難になる場合があると推測され,抽出法の違いに基づく影響は小さいと考えられた.したがって,いずれの抽出法も DNA マーカーの適用に対して十分に有用であり,確実な品種識別を行うためには,食品の種類および実験環境に応じてプライマー量や DNA 供試量等の実験条件を調整することが必要であると考えられた.コストや時間を考慮して最適な手法を選択することが望ましい.

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© 2012 日本食品科学工学会
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