日本食品科学工学会誌
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各種タンパク質粉末を添加した冷凍すり身加熱ゲルのレオロジー的性質とタンパク質の溶解性との関係
國本 弥衣奥村 知生渡辺 宗一郎加藤 登新井 健一
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2013 年 60 巻 10 号 p. 567-576

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抄録

ホッケ(AG)とスケトウダラ(WP)の冷凍すり身を3%NaClと擂潰後,3%各種タンパク質(卵白(Al),大豆タンパク質(Sp)およびカゼインNa (C-Na))粉末の添加の有無の下で,90°Cで30分間,または25°Cで数時間予備加熱後に90°C,30分間加熱して,直加熱ゲルと二段加熱ゲルを調製した.加熱ゲルの物性(破断強度,BSと破断凹み,bs)をレオメーターにより測定しゲル剛性(Gs=BS/bs)を求めた.また,細切した加熱ゲルを0.6M NaCl (N),1.5 Mまたは8.0M 尿素(U),および2%-2メルカプトエタノール(Me)から成る各種の溶媒と共に撹拌し,タンパク質の溶解度を測定した.
結果は以下の通りであった.
1) AGからの直加熱ゲルと二段加熱ゲルは,3種の添加物の有無に関わりなく,全て非坐りゲルとなり,物性値は低値に留まった.
2) WPからの直加熱ゲルは,3種の添加物の有無に関わりなく,非坐りゲルとなる.二段加熱ゲルは坐りゲルとなり,物性は高値に達する.またAlとSpの添加は坐りゲル化能を増強し,物性はさらに高値となるが,C-Naの添加は坐りゲル化を抑制し,物性は低値に留まった.
3)非坐りゲルタンパク質は,その大部分がN-8.0M U-Me溶剤に溶解した.N-8.0M U溶剤への溶解度との差から,疎水性相互作用がゲル形成に強く関与していること,またAlとSpを加えるとS-S結合も関与することが示唆された.
4)坐りゲルのタンパク質は,予備加熱の進行に伴ってN-8.0M U-Meに溶解しなくなり不溶化成分が増加した.AlやSpを加えると不溶化を増強するが,C-Naはむしろ抑制した.不溶性成分はSDS-8.0M U-Meには完全に溶解するので極めて強い結合力により坐りゲル化に関与していると推定された.

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© 2013 日本食品科学工学会
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