日本食品科学工学会誌
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寒天ゲルのサイズが咬筋・顎二腹筋の活動に及ぼす影響
北出 晶美佐川 敦子不破 眞佐子森髙 初惠
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2014 年 61 巻 7 号 p. 293-301

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抄録

ミートグラインダーにより破砕した破砕寒天ゲル,3.5mm±0.5mm角および15mm角に切断した3.5mm立方体寒天ゲル,15mm立方体寒天ゲルを試料とし,咀嚼・嚥下時の筋活動量の測定および官能評価を行い,摂食前の食品サイズの相違が咀嚼・嚥下時の筋活動量に及ぼす影響について検討した.
破砕ゲルは,少ない咀嚼回数においても咬筋活動量は小さく,咀嚼回数の増加に伴う咬筋活動量の変化は小さかった.特に,咬筋活動時間の低下が緩慢であった.主観評価においても全ての咀嚼回数において咀嚼時の力は弱く,嚥下時の舌と硬口蓋の接触圧は弱いと評価された.
3.5mm立方体ゲルでは,5回から20回咀嚼における咬筋活動強度は最も高く,咀嚼回数の増加に伴う咬筋活動量および咀嚼終了時から嚥下までの時間の低下は緩慢であった.また,主観評価においても,試料が咀嚼により破壊されている感覚は15mm立方体ゲルと比較し低く,咀嚼回数が増加してもまとまりにくく,嚥下時の舌と硬口蓋の接触圧は強いと評価された.
15mm立方体ゲルは,5回咀嚼では,3.5mm立方体ゲルに比べ咬筋活動強度は低いものの咬筋活動時間が長く,それに伴い咬筋活動量は大きかった.また,咀嚼終了時から嚥下までの時間も長かった.しかし,咀嚼回数の増加に伴い咬筋活動量および咀嚼終了時から嚥下までの時間は顕著に低下し,主観評価においても試料が咀嚼により破壊されている感覚は強く,3.5mm立方体ゲルと比較し,まとまりやすく,嚥下時の舌と硬口蓋の接触圧は弱いと評価された.
これらの結果から,摂食前の食品サイズの相違により,咀嚼時の咬筋活動量は異なることが判明し,今回用いた試料では,30回咀嚼までは破砕ゲルの咀嚼時の力が最も弱く,反対に3.5mm立方体ゲルが最も大きな咀嚼力を必要とすることが示唆された.

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© 2014 日本食品科学工学会
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