日本食品科学工学会誌
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ゼラチン/マルトデキストリン共存系のゲルおよびフィルムにおける相分離構造と物性との相関
齋藤 健太木下 友花釜口 良誠水谷 勝史中村 卓
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2015 年 62 巻 4 号 p. 191-200

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抄録

本研究では食用カプセル皮膜のモデルとしての湿潤ゲルと乾燥フィルムの相分離構造と物性の相関について明らかにすることを目的とした.ゼラチン/マルトデキストリン共存系のゲルとフィルムを作製し,CLSM,SEMおよびTEMを用いて微細離構造を観察した.また,クリープメータを用いて破断試験を行い,DE値が小さい高分子量のマルトデキストリンを用いる程,ゲルおよびフィルムの相分離構造のマルトデキストリン-リッチ分散相サイズが大きい傾向が見られた.これらフィルム構造を,分散相の平均長径の大きいものから順に,マクロ相分離構造(DE4-M添加,9.7μm),セミマクロ相分離構造(DE11-M添加,4.7μm),ミクロ相分離構造(DE16-M添加,1.7μm),均質構造(DE18-M添加,無)と分類した.
ゲルとフィルムは,類似の相分離構造を示したが,破断強度試験での破断点には相関は見られなかった.また,破断前の一定変形距離でのゲルとフィルムの応力/荷重において負の相関が見られた.蒸留水への溶解時間のゲルとフィルムの間に正の相関が見られ,ゲルもフィルムも同様に分散相サイズの大きいもの程溶解時間が長く,溶けにくかった.
フィルムの破断変形距離は,マルトデキストリン分散相サイズの大きいフィルム程短くなった.また,一定変形距離での荷重と連続相の領域面積比率の間,および溶解時間と連続相の領域面積比率の間にそれぞれ負の相関が有意に見られた.このことから,連続相の領域面積比率の減少に伴い,連続相のゼラチンネットワーク密度が相対的に上昇したため,かたく,溶けにくいフィルムになったと考えらる.
以上のように,ゼラチン/マルトデキストリン共存系において,マルトデキストリンの分子量(DE値)を選択することで,ゲル-シートおよびフィルムの相分離構造のマルトデキストリン-リッチ分散相(大きさと数)を制御できることが明らかとなった.このフィルムの相分離構造の違いにより,かたさ,割れやすさ,溶けにくさといったフィルムの物性を制御できることが明らかとなった.

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© 2015 日本食品科学工学会
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