日本食品科学工学会誌
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技術論文
甜茶抽出物とペルオキシダーゼの組合せによる酵素的消臭効果
髙垣 奈保児玉 悠史森田 大紀徳本 匠桜井 孝治荒川 勉大澤 謙二
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2015 年 62 巻 8 号 p. 409-416

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抄録

ペルオキシダーゼ併用により高い消臭増強効果を示した甜茶抽出物について,作用機序解明および食品への応用検討を行った.
ペルオキシダーゼによる甜茶抽出物の消臭増強効果におけるpHの影響を調べた結果,pH 7.0が最も消臭増強効果を高める条件であった.また,甜茶抽出物の試料溶液(pH 7.0)が消臭反応時に生成する過酸化水素量は,甜茶抽出物濃度が高くなるにつれ,生成量が増えた.
これらの結果から,ペルオキシダーゼによる甜茶抽出物の消臭増強効果の作用機序は,1)大気条件下の消臭試験(pH 7.0)において,甜茶抽出物が過酸化水素を生成し,2)それを酸化剤としたペルオキシダーゼの触媒作用により,甜茶抽出物中のポリフェノールの酸化が促進され,3)酸化されたポリフェノールがMeSHと反応することにより消臭増強効果が得られることが示唆された.
一方,無酸素条件下やpH 6.0でのペルオキシダーゼによる甜茶抽出物の消臭増強効果は,大気条件下(pH 7.0)でのそれより劣っていたが,さらに過酸化水素を添加することで高い消臭率を示した.また無酸素条件下での甜茶抽出物の試料溶液(pH 7.0)が消臭反応時に生成する過酸化水素量は,大気条件下でのそれと比較して少なかったことより,無酸素条件下では甜茶抽出物がペルオキシダーゼの触媒作用に充分な過酸化水素を生成できないことが,酵素的消臭の制限となっていることが示唆された.
食品への応用検討として,ペルオキシダーゼと甜茶抽出物の比率を検討した結果,ペルオキシダーゼを添加した甜茶抽出物の酵素的消臭は,その3倍量の甜茶抽出物より高い消臭効果を示した.またチューインガムに甜茶抽出物,または甜茶抽出物とペルオキシダーゼを配合したところ,ペルオキシダーゼ配合による消臭増強効果が認められた.

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© 2015 日本食品科学工学会
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