日本食品科学工学会誌
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62 巻, 8 号
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総説
  • 真野 潤一
    2015 年 62 巻 8 号 p. 365-373
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    Genetically modified (GM) crops are widely cultivated in many countries and the number of commercially available GM events has been rapidly increasing. This situation necessitates efficient analytical methods for ensuring the compliance with regulations relevant to GM organisms (GMOs). We developed a real-time PCR array method as an analytical platform for comprehensive GMO detection. Primer-probe sets for the specific detection of GM events, recombinant DNA segments, taxon-specific endogenous genes and so on were designed, and a 96-well PCR plate was prepared with a different primer-probe in each well as the real-time PCR array. The DNA extract from an analytical sample was mixed with a real-time PCR master mix and placed in the wells of the plate. Finally, the positive/negative results were determined from the obtained amplification curve for each well. Analytical performance, such as specificity and sensitivity, were evaluated in house and then the method was validated. Furthermore, a comparative analysis of the test result and publicly available information on GM crops approved in Japan allowed us to potentially identify unapproved GM crop contamination.
報文
  • 竹本 和仁, 前田 晃宏, 浅野 真理子, 高橋 享子
    2015 年 62 巻 8 号 p. 374-381
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    農林61号全粒粉の低アレルゲン化を目的に,麹,酵母,納豆菌から10種の菌株を選択し,24∼72時間発酵させプロテアーゼ活性を測定した.さらにSDS-PAGEおよびキャピラリー電気泳動でタンパク質変化と小麦アレルギー患者血清を用いてアレルゲン性を確認した.その結果,10菌株のうち納豆(千葉)由来Bacillus subtilisによる発酵が,プロテアーゼ活性が高く,患者血清よるIgE結合性でも82%の低下を示した.HPLCとLC-MS/MS分析から,低減化したタンパク質はγ-グリアジンおよびLMW-GSであることを明らかにした.
  • 亀谷 宏美, 齊藤 希巳江, 萩原 昌司, 等々力 節子
    2015 年 62 巻 8 号 p. 382-393
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,日本国内で入手可能な7種の香辛料を長期貯蔵し,ESRを用いた照射セルロースラジカル由来のS信号検出による照射検知の可否について検討した.その際,CEN標準分析法が定めるEN178715) の測定条件と判定基準に拠る方法(測定法1)と,S信号の検出に適した測定条件を設定し,S1信号の強度とMSまでの距離を判定基準とした方法(測定法2)を比較検討した.S1,S2信号の強度と距離を判定に用いる測定法1では,信号強度が微小なS1,S2信号の検出が困難なことや,高磁場側のS2信号が線幅の広いMS信号に覆われて観測することができず,照射した香辛料であっても「非照射」と判定されることが多かった
    一方,最適化した測定条件,判定基準(測定法2)により長期貯蔵した7種の香辛料の照射検知の可否について検討した結果,ほぼすべての香辛料で照射線量に関わらず2ヶ月後まで照射と判定できた.さらに,1kGy照射では黒コショウが4ヶ月後,クミンは6ヵ月後程度判定できた.5kGy照射では,コリアンダー,白コショウが4,6ヵ月後,黒コショウとクミンは4年後も照射と判定できた.各々の香辛料の照射判定結果から,黒コショウとクミンは照射後長時間経過してもESR法によるスクリーニング検査に利用できる可能性が示された.しかし,その他の試料(バジル,パセリ,オレガノ,コリアンダー,白コショウ)は長期貯蔵後に判定基準となるS信号の検出が困難なため,ESR法による検知には不向きであった.測定法2では,測定法1よりもS信号検出率が上昇し,より長期間高い精度で照射が判定できた.
    PSL法はバジル,パセリ,オレガノ,コリアンダー,クミンの照射判定のスクリーニングに応用できる可能性が示された.しかし,ESR法で判別可能であった黒コショウはPSL法には不適応であった.一方,TL法は本研究で用いたすべての香辛料に対して4年を経過しても検知が可能であることを確認した.このように,TL法はESR法,PSL法に比べて照射判定の精度が高いが,試料調製や標準照射の工程を合わせると結果の判明まで3日を要すため,検査効率の点では劣っている.そこで,TL法とあわせて,ESR法とPSL法のいずれかを香辛料の種類に応じたスクリーニング法として組み合わせることができれば,照射香辛料の検知精度と検査効率の向上が見込まれる.
    香辛料ごとに詳細な検討を要するが,少なくとも本実験で用いた試料について,クミンと黒コショウの照射検知が可能なESR法と,バジル,パセリ,オレガノ,コリアンダー,クミンの照射検知が可能なPSL法は,両者を使い分けることで,互いに不適応な試料のスクリーニング法として補完し合うことができる.
  • 渡邊 高志, 折笠 貴寛, 小出 章二, 佐藤 和憲, 中村 宣貴, 椎名 武夫, 田川 彰男
    2015 年 62 巻 8 号 p. 394-401
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    HWおよびSHSによってPOD残存活性比を数段階に調整した乾燥パプリカの品質(L-アスコルビン酸,総ポリフェノール,色彩)および消費者からみた嗜好度の変化を解析した結果,以下の知見が得られた.
    1) L-アスコルビン酸保持の観点からみた場合,乾燥パプリカにおけるHWおよびSHSによるブランチング終了条件をPOD残存活性比0.8とすることで,オーバーブランチングを抑制しつつL-アスコルビン酸残存率を1.2-1.3倍程度に最大化できることが示された.
    2)乾燥パプリカの総ポリフェノール保持の観点からすると,SHSがブランチング処理方法として適しており,また,ブランチング終了条件をPOD残存活性比0.8とすることで,オーバーブランチングを抑制しつつ総ポリフェノール残存率を1.3倍程度に最大化できることが示された.
    3)乾燥パプリカの色彩変化抑制の観点からすると,浸漬操作のないSHSがブランチング処理方法として適しており,POD残存活性比0.1とすることで色彩保持効果を最大化できることが示された.
    4)本研究における実験条件下において,重要度を考慮した複数品質の保持効果を最大化するブランチング処理終了条件はPOD残存活性比0.8であり,また,SHSの方がHWよりも複数品質保持効果の高い乾燥試料の製造に適していることが示された.
    これらの結果から,コンジョイント分析を用いたブランチング処理による複数品質の保持効果の評価を行うことで,乾燥パプリカ製造工程における最適ブランチング処理条件の検討が可能であることが示された.
技術論文
  • 野口 真己, 松本 光, 生駒 吉識
    2015 年 62 巻 8 号 p. 402-408
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    主要な国産果実であるウンシュウミカンの消費拡大に貢献するため,果実の新鮮な風味を生かしつつ,かつ,剥皮不要で手軽に食べやすい果肉加工品の開発を目的として,内皮の酵素剥皮の処理条件を検討した.内皮をポリガラクチュロナーゼ活性主体の酵素剤で低温処理することで,果肉の身割れによる損失を回避しつつ,フレーバーおよび糖,有機酸,アミノ酸の組成が生の果実に近い剥皮果肉を調製できることを明らかにした.従来の薬剤剥皮に対する差別化の方策の一つとして,低温酵素処理による果肉本来の風味を生かした剥皮加工が有効であると考えられた.
  • 髙垣 奈保, 児玉 悠史, 森田 大紀, 徳本 匠, 桜井 孝治, 荒川 勉, 大澤 謙二
    2015 年 62 巻 8 号 p. 409-416
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    ペルオキシダーゼ併用により高い消臭増強効果を示した甜茶抽出物について,作用機序解明および食品への応用検討を行った.
    ペルオキシダーゼによる甜茶抽出物の消臭増強効果におけるpHの影響を調べた結果,pH 7.0が最も消臭増強効果を高める条件であった.また,甜茶抽出物の試料溶液(pH 7.0)が消臭反応時に生成する過酸化水素量は,甜茶抽出物濃度が高くなるにつれ,生成量が増えた.
    これらの結果から,ペルオキシダーゼによる甜茶抽出物の消臭増強効果の作用機序は,1)大気条件下の消臭試験(pH 7.0)において,甜茶抽出物が過酸化水素を生成し,2)それを酸化剤としたペルオキシダーゼの触媒作用により,甜茶抽出物中のポリフェノールの酸化が促進され,3)酸化されたポリフェノールがMeSHと反応することにより消臭増強効果が得られることが示唆された.
    一方,無酸素条件下やpH 6.0でのペルオキシダーゼによる甜茶抽出物の消臭増強効果は,大気条件下(pH 7.0)でのそれより劣っていたが,さらに過酸化水素を添加することで高い消臭率を示した.また無酸素条件下での甜茶抽出物の試料溶液(pH 7.0)が消臭反応時に生成する過酸化水素量は,大気条件下でのそれと比較して少なかったことより,無酸素条件下では甜茶抽出物がペルオキシダーゼの触媒作用に充分な過酸化水素を生成できないことが,酵素的消臭の制限となっていることが示唆された.
    食品への応用検討として,ペルオキシダーゼと甜茶抽出物の比率を検討した結果,ペルオキシダーゼを添加した甜茶抽出物の酵素的消臭は,その3倍量の甜茶抽出物より高い消臭効果を示した.またチューインガムに甜茶抽出物,または甜茶抽出物とペルオキシダーゼを配合したところ,ペルオキシダーゼ配合による消臭増強効果が認められた.
研究ノート
  • 安藤 聡, 坂口(横山) 林香
    2015 年 62 巻 8 号 p. 417-421
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    グアニル酸等の呈味性ヌクレオチドは,グルタミン酸との相乗効果により,少量でうま味を増強する.調理用9品種と生食用2品種のトマトについて,加熱調理前後のグアニル酸含量を比較したところ,全品種において有意にグアニル酸が加熱により増加していた.加熱条件がトマトのグアニル酸の増減に及ぼす影響を調べることを目的に,25∼100°Cでトマト果実を加熱したときのグアニル酸およびその分解物であるグアノシンの含有量を定量した.これら2成分の挙動から,50∼60°Cにおいてグアニル酸の生成と分解の差が最大となった結果,最大のグアニル酸蓄積が起こったと考えられる.
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