日本食品科学工学会誌
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ナイシンおよびショ糖脂肪酸エステルによるListeria monocytogenesの付着およびバイオフィルム形成抑制
山木 将悟濱田 菜歩川合 祐史山崎 浩司
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2017 年 64 巻 10 号 p. 493-501

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抄録

本研究では,バイオフィルム形成の初めの段階である細菌の初期付着に着目し,ポリスチレン製ディッシュ上でL.monocytogenes細胞の付着を抑制する物質を探索し,ナイシンとホエイパウダーに強い付着抑制効果のあることを見出した.また,ナイシンでは付着抑制だけでなく,付着後の発育(バイオフィルム形成)抑制にも効果があった.次にこのナイシンの付着抑制効果を高める物質を調べ,SMPに優れた併用効果のあることを見出した.また,ナイシンとSMPで処理したディッシュ上ではL. monocytogenesの初期付着菌量が減少するだけでなく,ディッシュ上に付着するL. monocytogenes細胞に対して溶菌および細胞膜損傷作用を与えて殺滅していることを観察した.さらに,ナイシンとSMPの併用での表面処理は,L. monocytogenesが低菌量での汚染の場合にはバイオフィルム形成を完全に阻害し,汚染菌量が多い場合にも初期付着菌量の減少とバイオフィルム形成を大きく遅延させた.したがって,ナイシンとSMPを利用した器材表面の処理はL. monocytogenesの初期付着およびバイオフィルム形成抑制に有効な手法と考えられた.

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© 2017 日本食品科学工学会
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