本研究では,カットホウレンソウを供試材料とし,その質量モル濃度の測定値から氷結点を算出するとともに,differential scanning calorimetry(DSC)冷却曲線より過冷却点を計測した.その結果,試料の氷結点は-0.95±0.19℃,過冷却点は-7.1°C~-16.8℃の範囲にあることが示された.つぎに試料をフィルム密閉包装した後,-5℃で1週間過冷却保存させた.過冷却保存後の試料の細胞膜状態と細胞活性を電気インピーダンス計測法およびTTC還元法を用いて評価した結果,全試料48サンプルのうち45サンプルにおいて,細胞膜の閉鎖性が保たれること,また細胞活性を有することが示された.本研究は,カットホウレンソウ試料を-5℃において1週間過冷却状態を保つことが可能であることを示すが,過冷却保存は試料の細胞膜状態を変化させ,細胞活性を低下させることも示唆された.