日本食品科学工学会誌
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エゴノリの血糖上昇抑制および血管内皮細胞保護作用
村上 茂木村 公一川崎 安都紗小野 鮎子水谷 俊貴杉浦 彩香平澤 ちひろ矢田 知美新木 順子伊藤 崇志
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2020 年 67 巻 8 号 p. 257-263

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抄録

エゴノリは古くから日本各地で郷土料理の食材として利用されてきた.本研究では,エゴノリの機能性評価の1つとして,デンプン負荷による血糖値の上昇に対する作用を検討した.その結果,マウスへのエゴノリ抽出物の前投与により,デンプンによる血糖値の上昇が有意に抑制されることが示された.血糖値上昇抑制作用のメカニズムの1つとして,エゴノリに含まれる多糖類の α-グルコシダーゼ阻害作用の関与が示唆される.また,エゴノリ抽出物には,抗酸化作用と抗炎症作用が確認され,培養ヒト血管内皮細胞において高血糖による活性酸素種(ROS)の過剰産生と細胞死を抑制した.エゴノリ抽出物は高血糖により引き起こされる内皮細胞での酸化ストレスや炎症反応を減弱させ,内皮細胞の機能低下や細胞死を抑制することが示唆される.したがってエゴノリを摂取した際,エゴノリに含まれる多糖類が,腸管において糖質分解酵素活性を阻害して食後の急激な血糖値の上昇をおだやかにし,これが血管内皮細胞の傷害抑制につながる.加えて,腸管から吸収された抗酸化物質が高血糖により惹起される血管内皮細胞の酸化ストレスや炎症反応を直接軽減することにより,心筋梗塞などの血管病変のリスクの低減に役立つ可能性が考えられる.

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© 2020 日本食品科学工学会
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