日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
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67 巻, 8 号
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総説
  • 杉山 喜一, 栗城 大輔, 松岡 亮輔, 増田 泰伸, 久能 昌朗, 大後 栄治
    2020 年 67 巻 8 号 p. 245-256
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

    According to previous studies surveying dietary supplements for sports athletes, proteins and amino acids are mainly utilized to decrease post-training fatigue. Additionally, peptides as an intermediate product, composed of two or more amino acids, are well known as an anti-oxidative supplement that shows high absorbency. Egg White Peptide (EWP), produced by hydrolyzing egg white with a neutral protease, has strong anti-oxidative effects, and is anticipated to be useful as a functional ingredient for improving endurance training and maintaining physical conditioning. The results of three human studies suggest that EWP is effective and applicable to decrease muscle damage following physically demanding training sessions. Moreover, it is expected that administration of EWP would be highly effective for the treatment of muscle fatigue during prolonged strenuous exercise (marathon running) and/or overtraining. This overview of the effect of EWP dietary supplementation for daily endurance activities indicates its utility in improving physical conditioning of athletes and citizen runners.

報文
  • 村上 茂, 木村 公一, 川崎 安都紗, 小野 鮎子, 水谷 俊貴, 杉浦 彩香, 平澤 ちひろ, 矢田 知美, 新木 順子, 伊藤 崇志
    2020 年 67 巻 8 号 p. 257-263
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

    エゴノリは古くから日本各地で郷土料理の食材として利用されてきた.本研究では,エゴノリの機能性評価の1つとして,デンプン負荷による血糖値の上昇に対する作用を検討した.その結果,マウスへのエゴノリ抽出物の前投与により,デンプンによる血糖値の上昇が有意に抑制されることが示された.血糖値上昇抑制作用のメカニズムの1つとして,エゴノリに含まれる多糖類の α-グルコシダーゼ阻害作用の関与が示唆される.また,エゴノリ抽出物には,抗酸化作用と抗炎症作用が確認され,培養ヒト血管内皮細胞において高血糖による活性酸素種(ROS)の過剰産生と細胞死を抑制した.エゴノリ抽出物は高血糖により引き起こされる内皮細胞での酸化ストレスや炎症反応を減弱させ,内皮細胞の機能低下や細胞死を抑制することが示唆される.したがってエゴノリを摂取した際,エゴノリに含まれる多糖類が,腸管において糖質分解酵素活性を阻害して食後の急激な血糖値の上昇をおだやかにし,これが血管内皮細胞の傷害抑制につながる.加えて,腸管から吸収された抗酸化物質が高血糖により惹起される血管内皮細胞の酸化ストレスや炎症反応を直接軽減することにより,心筋梗塞などの血管病変のリスクの低減に役立つ可能性が考えられる.

研究ノート
  • 廣野 久子, 後藤 昇一, 相羽 信弥
    2020 年 67 巻 8 号 p. 264-270
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

    一般に流通している深蒸し茶と普通蒸し茶の水溶性ペクチンおよびカテキン類について,静岡県内の各産地の一番茶の荒茶を用い,含量の差異および実際の飲用条件におけるそれらの成分の浸出の程度を明らかにした.深蒸し茶は普通蒸し茶と比較して,茶葉中の水溶性ペクチン含量が高いだけでなく,その浸出率が高く,2煎目ではさらに高まることが明らかになった.1煎目,2煎目のペクチンの合計浸出率は,深蒸し茶が34%,普通蒸し茶が16%と2倍強の差があった.一方,カテキン類の茶葉中含量は普通蒸し茶の方が多く,1煎目の浸出率は普通蒸し茶の方が,2煎目の浸出率は深蒸し茶の方が高いという結果であったが,ペクチンと比べると,深蒸し茶,普通蒸し茶の差は小さいものであった.1煎目,2煎目のカテキン類の合計浸出率は,深蒸し茶,普通蒸し茶ともに44%前後で差がなかった.カテキン類含量に対する水溶性ペクチン含量の割合が,深蒸し茶の方が普通蒸し茶よりも高く,その差は茶葉中<1煎目<2煎目の順に大きくなった.

報告
  • 森田 亜紀, 早川 文代, 香西 みどり
    2020 年 67 巻 8 号 p. 271-281
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

    ナチュラルチーズ13種類とこれらを小麦粉に対して10%添加したチーズブレッドの成分分析を行い,チーズブレッドの風味成分の特徴について考察した.

    低分子量化合物の成分分析の結果,チーズブレッドの分類にはアミノ酸と脂肪酸が大きく寄与していた.アミノ酸はチーズブレッドに配合した「チーズの熟成期間の長さに由来する熟成の程度」,脂肪酸は「チーズのカビ発酵熟成の程度」を表していると解釈できた.アミノ酸はグリーンな香り,酵母エキスの香り,スモークの香り,チーズを焼いたような香り,塩味,うま味,エグ味,後味と正の相関が見られる成分が多かった.脂肪酸はカビの香り,グリーンな香り,エグ味,後味と正の相関が見られる成分が多かった.

    本研究によりチーズとチーズブレッドの水溶性成分が明らかとなり,チーズブレッドを製造する際のナチュラルチーズの選択と配合決定が容易になると考えられる.

解説
シリーズ─研究小集会(第43回)果汁部会
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