後加熱処理により,VMW濃縮トマトピューレのグルタミン酸およびアスパラギン酸は増加した.これに伴い,官能評価においてうま味の評価が高くなり,美味しさを示す総合も高評価となったと考えられる.また,後加熱処理により,トマトピューレに含まれるリコペンのトランス型からシス型への異性化が起こったと考えられる.シス型リコペンは,トランス型リコペンよりも体内への吸収率が高いことから,後加熱処理の導入によるVMW濃縮トマトピューレの高品質化が期待される.一方,L-AsA残存率やDPPHラジカル消去活性においては,その値に有意差はなく,これらの項目について,後加熱処理に伴う負の影響は認められなかった.
以上より,VMW濃縮トマトピューレに後加熱処理を適用することにより,食味の改善,抗酸化能が高く,かつ体内に吸収しやすいシス型リコペンの増加,L-AsAや抗酸化能の保持,が確認された.これより,後加熱処理の導入により高品質なVMWトマトピューレの製造が期待される.今後,実用レベルにおけるVMWによるトマトピューレの製造技術の確立に向けて,スケールアップによる実証研究や製造コストの解析が必要となる.