日本食品科学工学会誌
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研究ノート
リン核定量NMR法によるサプリメント中のホスファチジルセリン定量法の妥当性検討
加藤 毅 笛木 周平山本 佳奈水口 恵美子五十嵐 友二
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2023 年 70 巻 1 号 p. 33-41

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抄録

本研究では, 最近認知維持機能が注目され, 機能性表示食品として多く受理されている中, その定量性に課題を抱えていたPSについてサプリメントに焦点を絞りリン脂質に対する定量NMR分析法の改良と妥当性を検討した. この結果, 無添加サプリメントに対して5 g/100 gレベルの添加回収試験を行った場合, 平均回収率100.5 %, 併行精度, 室内精度はともに相対標準偏差1 %未満であった. また, 12 g/100 gを含有するサプリメントについて繰り返し試験を実施した結果, 室内再現精度相対標準偏差2.9 %, 併行精度相対標準偏差1.7 %から試験室間再現精度標準偏差 (RSDR) は約4~5 %と推測された. コーデックス委員会PROCEDURAL MANUAL9) 及びAOAC International10) で定める10 g/100 g濃度レベルのRSDR許容範囲は≤ 6 %, (Horrat値 ≤ 2) であることから, 十分な精度を持つことが示された. 定量下限は試料中に換算すると約0.25 mg/粒 (1粒が0.5 gのとき0.05 g/100 g) 程度と推定され, 一般的に市販されているサプリメント中の含量の範囲からも本NMR法において十分な定量下限が設定されるものと推察された.

さらに, 機能性表示食品3種を含むサプリメント6種について適用性を検討した結果, いずれの試料からもPSのシグナルを阻害するマトリクス由来のシグナルは認められなかった. ただし, 機能性表示食品以外の試料2種は表示値のそれぞれ13 %, と36 %という著しい表示割れを示したことから, 機能性表示食品以外の市場流通サプリメント中のPSについて表示値の妥当性のさらなる検証が必要である. 本法はPS含有サプリメントの適正表示を実現しうる有力な分析法である.

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