日本食品科学工学会誌
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70 巻, 1 号
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報文
  • 小舘 琢磨, 藤岡 智明, 仲條 眞介, 岡留 博司, 小出 章二
    原稿種別: 報文
    2023 年 70 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2023/01/16
    [早期公開] 公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    本研究では, 窒素追肥技術により栽培・収穫した低アミロース米品種「きらほ」の多肥栽培米 (以下「高タンパクきらほ」) および標肥栽培米 (以下「きらほ」) と主食用うるち品種「ひとめぼれ」の白米米飯, 保蔵温度および保蔵時間別の物性を測定した. その結果, 以下の知見を得た. 「高タンパクきらほ」の集団粒の硬さは, 「ひとめぼれ」と比較して, いずれも有意に柔らかく, 特に10 ℃および5 ℃の保存下では72時間後の硬さは, 24時間後の「ひとめぼれ」と同程度の硬さを保っていた. また, 付着性および粘りは, 10 ℃および5 ℃の保存下では, 48時間後に急激な低下が見られるものの, 減少幅は「きらほ」より小さかった. 一方, 単粒において, 表層硬さは5 ℃では, 72時間後の「高タンパクきらほ」の硬さは, 24時間後の「ひとめぼれ」の硬さと同程度だった. また, 表層の付着性は, 「高タンパクきらほ」においては, 10℃では72時間後, 5 ℃では48時間後まで減少傾向だったものの, 「ひとめぼれ」より緩やかな減少を示していた. さらに, 全体の硬さは, 「ひとめぼれ」は10℃では48時間後, 5 ℃では24時間後に急速に硬くなっていたが, 「高タンパクきらほ」は, 10 ℃および5 ℃では, 24時間後までは処理時の硬さを維持していた. 以上, 栽培技術によりタンパク質含有率を高めた低アミロース米「きらほ」は, 「ひとめぼれ」よりも保存温度および保存時間における米飯物性の変動が小さいことから, チルド米飯用としての新たな活路が期待できる.

  • 伊藤 智広, 山本 大, 瀧田(森) 優子, 阿閉 耕平, 横山 一樹, 中島 綾香, 鈴木 健吾
    原稿種別: 報文
    2023 年 70 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2023/01/16
    [早期公開] 公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    アワビは商業的価値の高い水産物であるが, その漁獲量は年々減少の傾向にある. 水産資源管理や商業的目的から世界各地で養殖が行われているが, 効率の良い成長促進が期待できる飼料の開発が求められている. 本研究ではクロアワビ養殖のためのエコフィード (食品循環資源利用飼料) を食品加工時の副産物であるおからや酒粕, 米糠を主原料として作製した. 9ヶ月の給餌試験の結果, 開発飼料給餌区の殻長や体重, 栄養成分 (遊離アミノ酸および脂肪酸) はいずれも市販固形飼料給餌区のクロアワビ個体と変化がなく, 同等の成長を確認した.

技術論文
  • 中澤 洋三, 森野 達也, 宮下 慎一郎, 南 和広, 相根 義昌
    原稿種別: 技術論文
    2023 年 70 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2023/01/16
    [早期公開] 公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    北海道固有の生物資源であるエゾシカを有効活用するべく, エゾシカ肉の特徴を活かし, 独特な臭みや硬い食感などの欠点を改善した「蝦夷鹿ソーセージ」を開発した. 粗挽きエゾシカもも肉に粗挽き豚脂20 %, 砕氷20 %, 食塩2.4 %, 砂糖2 %, 発色剤0.15 %, 発色助剤0.1%, ポリリン酸塩0.2%, 重曹0.4 %, ブラックペッパー粗挽き0.6 %, オールスパイス0.2 %およびセージ0.2 %を添加して, 手捏ねで混合した後, 羊腸に充填し, 60 ℃雰囲気-30分乾燥後, 60 ℃雰囲気-30分燻煙し, 中心温度70 ℃-1分のクッキングで製造した「蝦夷鹿ソーセージ」は, 食感と血のような味質が大幅に改善し, シカ肉に特徴的なタンパク質と鉄の含量が高く, 脂質の含量が低い栄養特性を有し, 肉色の赤さを生かした赤みが強い, 官能評価のバランスに優れた製品となった.

研究ノート
  • 加藤 毅, 笛木 周平, 山本 佳奈, 水口 恵美子, 五十嵐 友二
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 70 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2023/01/16
    [早期公開] 公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    本研究では, 最近認知維持機能が注目され, 機能性表示食品として多く受理されている中, その定量性に課題を抱えていたPSについてサプリメントに焦点を絞りリン脂質に対する定量NMR分析法の改良と妥当性を検討した. この結果, 無添加サプリメントに対して5 g/100 gレベルの添加回収試験を行った場合, 平均回収率100.5 %, 併行精度, 室内精度はともに相対標準偏差1 %未満であった. また, 12 g/100 gを含有するサプリメントについて繰り返し試験を実施した結果, 室内再現精度相対標準偏差2.9 %, 併行精度相対標準偏差1.7 %から試験室間再現精度標準偏差 (RSDR) は約4~5 %と推測された. コーデックス委員会PROCEDURAL MANUAL9) 及びAOAC International10) で定める10 g/100 g濃度レベルのRSDR許容範囲は≤ 6 %, (Horrat値 ≤ 2) であることから, 十分な精度を持つことが示された. 定量下限は試料中に換算すると約0.25 mg/粒 (1粒が0.5 gのとき0.05 g/100 g) 程度と推定され, 一般的に市販されているサプリメント中の含量の範囲からも本NMR法において十分な定量下限が設定されるものと推察された.

    さらに, 機能性表示食品3種を含むサプリメント6種について適用性を検討した結果, いずれの試料からもPSのシグナルを阻害するマトリクス由来のシグナルは認められなかった. ただし, 機能性表示食品以外の試料2種は表示値のそれぞれ13 %, と36 %という著しい表示割れを示したことから, 機能性表示食品以外の市場流通サプリメント中のPSについて表示値の妥当性のさらなる検証が必要である. 本法はPS含有サプリメントの適正表示を実現しうる有力な分析法である.

解説
シリーズ─研究小集会 (第51回) 大豆部会
  • 中森 俊宏
    原稿種別: 解説
    2023 年 70 巻 1 号 p. 43-45
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2023/01/16
    [早期公開] 公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    大豆は, 世界中で広範囲に栽培されている重要な油糧種子資源の一つで, 植物油としての世界生産量はパーム油についで世界第二位である. 大豆油は, ドレッシング, マヨネーズやマーガリンなどの食品用途だけでなく, 大豆インキ, プラスチックやバイオディーゼルなどの非食品用途でも使用されている. 大豆油は大豆種子中の約20 %を占めており, その脂肪酸組成の特徴は, リノール酸やα-リノレン酸といった多価不飽和脂肪酸含量が多く, オレイン酸, パルミチン酸やステアリン酸などの飽和脂肪酸も含まれている. 中でもα-リノレン酸は, 酸化しやすくオフフレーバー発生の原因物質となることから, いくつかの育種技術を使って大豆油組成を改変した新品種の開発が進められてきた. 2021年日本食品科学工学会第68回大会の研究小集会大豆部会では, 突然変異体を用いて大豆油成分の改変の研究開発を進めている九州大学大学院農学研究院穴井豊昭先生に最新の研究成果と今後の展望を示していただいた.

  • 穴井 豊昭
    原稿種別: 解説
    2023 年 70 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2023/01/16
    [早期公開] 公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    Soybean [Glycine max L. (Merr.)] is an important legume crop, with an annual global production of 367.8 million tons. The seeds contain about 20% oil of dry weight, which is mainly used for oil extraction, and the improvement of soybean oil quality is a critical subject world-wide. We isolated several fatty acid accumulation mutants and identified the corresponding genes. Next, we attempted to improve the soybean oil quality using these mutant genes. We successfully developed a novel high-oleic acid soybean cultivar, "SADAIEICHIOICHIGOU", from which oil with an oleic acid content as high as 80 % of total fatty acids was obtained. Moreover, the linoleic acid content of "SADAIEICHIOICHIGOU" was obviously low. The oil extracted from this cultivar showed higher oxidation stability than conventional varieties and had decreased levels of the unpleasant green off-odor of soybeans. In addition, we isolated a novel mutant that does not accumulate furan fatty acids, associated with a hay-like odor, and identified the corresponding gene. This series of soybean fatty acid mutants have great potential to improve the nutritional value, functionality, palatability, and oxidative stability of soybean-based food.

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