2023 年 70 巻 9 号 p. 443-450
本研究では, 熱力学物性に基づく新しい抽出モデルを開発することができた. このモデルは, Henry型の分配係数のほか, Langmuir式などの吸着等温式を許容することができるモデルであり, 理論予測が難しい物質移動係数や拡散係数などの速度論パラメータを介さない点で利便性が高いものである. また, ここで構築した数理モデルは, 超臨界CO2純溶媒に限らず, 均一相系の溶媒であれば液体抽出などにも応用できる. さらに, 食品などへの展開を想定すると, 複数溶質を含む場合のモデル上での取り扱いも必要になるが, 溶質間の相互作用が無視できる状態であれば, 溶質ごとに個別に計算することで多成分系にも展開できるものである. 今後, 熱力学基礎物性に基づく抽出挙動の完全予測が期待される.