日本食品科学工学会誌
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オボムコイドの性状変化が消化性に与える影響
富岡 敏彦内藤 宙大廣瀬 潤子門間 敬子成田 宏史和泉 秀彦
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論文ID: NSKKK-D-23-00062

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抄録

鶏卵アレルギー患者において, 鶏卵と小麦粉を混捏・焼成したベイクドエッグであれば症状誘発閾値を超えて摂取できるという報告がある. また, OMは熱耐性がある水溶性タンパク質として知られているが, ベイクドエッグ中のOMは不溶化していることが明らかとなっている. 本研究では, 性状 (立体構造や溶解性) の異なるOMの消化性を明らかにすることを目的とし, 不溶化OMがアレルギー症状を誘発しにくい機序を考察した. 性状の異なるOM (精製, 加熱, 未焼成および焼成) を作製し, ペプシン, キモトリプシンおよびトリプシンにて消化処理した. その後, Lowry法, SDS-PAGEおよびイムノブロットにて解析を行った. 精製OM, 加熱OMおよび未焼成OMの水溶性タンパク質濃度は, 消化後も変化しなかった. 一方, 焼成OMの水溶性タンパク質濃度は, 消化前は低かったが, ペプシンおよびキモトリプシン消化では, 消化中にタンパク質濃度が増加した. イムノブロットの結果, 焼成OMの上清に検出されたタンパク質バンドは, タンパク質濃度が同等であるにも関わらず, 精製OM, 加熱OMおよび未焼成OMより薄く検出された. また, 焼成OMの残渣中から未分解のOMが検出された. トリプシン消化では, すべての試料において消化後の変化はみられなかった. 以上のことから, 焼成OMは, 他の試料より消化後の分解断片の抗体結合能が低下していることに加え, 残渣中にOMが残存しており, これがアレルギー症状誘発に影響を与えている可能性が考えられた.

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