日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
インベルターゼの製造と利用に関する研究(第1報)
液状酵素製造に関する2, 3の知見
大橋 実小堤 惇一
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ジャーナル オープンアクセス

1966 年 13 巻 1 号 p. 1-7

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抄録
酵母工業製品の一利用策として,いまだ国産化されていないショ糖転化酵素インベルターゼを製造し,これを食品工業に広く利用することを考えて研究に着手した。
まず,輸入商品のインベルターゼ液について筒単な調査を行ない,これと同等の酵素液の製造工程について検討し,つぎの知見をえた。
(1) インベルターゼ抽出原料としては,ある種のパン酵母が有望とみられるが,現在市販されているパン酵母,食飼料用野生酵母などはインベルターゼ含量がはなはだ低くインベルターゼ原料としての希望が持てない(第1図参照)。
(2) 酵母細胞よりのインベルターゼ抽出は,圧搾酵母にトルオールを20ml/100g酵母の割合に混和,30℃で48時間自己消化後,水抽出すればよい(第2図参照)。
(3) インベルターゼ抽出液とほぼ等量の冷エチルアルコールを添加すれば,インベルターゼをほぼ定量的に沈殿分離できる(第3図参照)。
(4) 沈殿酵素は,pH 4.5の緩衝液に溶解しておけば長期間活性を保持できる(第4図参照)。
(5) 上記各工程の検討にもとずき,酵素液の試作を行なった(第5図参照)。
酵素液製造は技術的には比較的容易であるが,インベルターゼ低含有率の酵母を用いると沈殿剤の所要量が増し,非常にコスト高になる。インベルターゼ高含有率の酵母を用いれば,酵母1.5kgより酵素液1lを約500円の材料費で製造可能と認められる。
(6) 酵母からインベルターゼを製造するさいに重要な点は,(1) インベルターゼ高含有率の酵母から出発すること,(2) 沈殿剤添加時の温度をできるだけ低く保ち失活をふせぐこと,(3) 沈殿剤(エチルアルコール)の回収,合理的使用に意を用いる,(4) 酵素液はpH 4.5付近の液に保存する,などである。
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© 社団法人 日本食品科学工学会

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