日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
還元糖とアミノ酸とのかつ変反応物に関する研究
(第7報)かっ変反応物による油脂過酸化物の分解について
山口 直彦岡田 安司
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1968 年 15 巻 5 号 p. 187-191

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抄録

かっ変反応物によるラードの過酸化物の分解を試験した結果はつぎのとおりである。
(1) かっ変反応物によるラードの過酸化物の分解はその後の過酸化物価の変化の傾向と,重量,リノール酸量の変化の傾向から,酸化抑制的な分解であると考える。一般に過酸化物の分解は,自動酸化の際にみられるラジカル生成的分解(式1)および過酸化物が還元性物質と反応して(式2)のようにアルコールを生成する反応が考えられる。
ROOH→R;RO;ROO・;HO・ (式1)
(式2)
(式1)の分解では生じた各種ラジカルが未反応の脂質に反応して自動酸化の連鎖反応は進行するが,(式2)のROHは不活性であり,自動酸化には関与しないと考えられる。したがって,かっ変反応物によっての過酸化物の分解は(式2)のタイブに従がって分解するのではないかと推察する。
(2) 過酸化物の分解に対する温度の影響は,100℃が最大であり,低温ほどその分解は少なかった。このことは過酸化物が高温で不安定であること,高温でかっ変反応が非常に進み還元性物質を多量生ずるためと思われる。
(3) 高い過酸化物価を有するラードでは,DPPH,フェリシアン化カリウム還元力の値が小さいこと,色素の生成が少ないことから考えると,かっ変反応物は過酸化物によって酸化されると推察される。

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