日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
園芸作物の硝酸塩蓄積に関する研究
(第11報) トマト果実の硝酸塩蓄積におよぼす品種の影響(1)
宮崎 正則国里 進三美谷 誠一
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1972 年 19 巻 9 号 p. 423-428

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抄録

(1) トマト果実のNO3-N蓄積の品種間差異を検討した。
(2) 完熟果のNO3-N濃度は'チコ'では収穫初期にのみ高く,中期,後期には低く,'Heinz 1370','ブレームスソリッドレッド'は収穫全期間を通して低く,一方'ファイアボール'と'アマチュア'はつねに高い値を維持し,明らかに品種間の差異が認められた。
(3) 果実の成熟中のNO3-N濃度の変化は'チコ','Heinz 1370','ブレームスソリッドレッド'は緑白期から完熟期にかけて減少し,'ファイアボール','アマチュア'は緑白期から完熟期にかけて減少しないか,または減少しても未熟期の高い蓄積量のため完熟果のNO3-N濃度は著しく高い値を示した。
(4) 果実の無機物質濃度はNO3-N濃度の高い'ファイアボール','アマチュア'と低い'チコ','Heinz 1370','ブレームスソリットレッド'の間に有意差は認められなかった。一方NO3-N濃度の高い果実は低い果実に比べN, P, K含量が高く,Ca含量は低い傾向が認められた。
(5) 硝酸還元酵素活性は葉身で高く,次いで葉柄,へたで高く,果実では著しく低く,しかも着色開始と同時にほとんど認められなくなった。各部位,各時期の活性から果実のNO3-N濃度の差異を説明することはできなかった。

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