日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
ワインの主要なSO2受容体3成分のSO2結合率に及ぼすブドウ果皮の影響
ワイン醸造におけるSO2の有効利用に関する研究(第14報)
渡辺 正平飯野 修一野白 喜久雄
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1987 年 34 巻 3 号 p. 148-154

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抄録

赤ワイン醸造の特徴である“かもし”仕込み工程の果皮が,主要SO2受容体であるAcH, PA及びα-KGのワイン中におけるSO2結合率を阻害しているものと考え,3受容体のSO2結合率の低下に及ぼすワイン醸造中のブドウ果皮の影響を検討し,さらにF-SO2含量,pH及び温度との関連と調べた結果,次のことが明らかとなった.
(1) AcHなど主要SO2受容体3成分のSO2結合率は,“かもし”仕込み工程の果皮の存在によって明らかに低下し,赤ワインのSO2結合率は白ワインより顕著に低かった.
(2) 受容体3成分のSO2結合率は,液及び“かもし”仕込みに関係なく,ワイン中のF-SO2含量の高いほど,かつ温度の低いほど高くなり,この傾向はAcHよりPA及びα-KGで強かった.しかし,ワインのpHのSO2結合率に及ぼす影響は小さかった.
(3) 試醸ワインのAcH, PA及びα-KGの定量値から,これに結合すべきSO2量を,実験で求めた3受容体のSO2結合率から算出したB-SO2の合計値(EL)とSO2結合能測定試験で得られたB-SO2の実測値(AL)とを比較すると,ALが常にELより大きな値を示し,SO2結合能(EL/AL)は73~87%であった.
(4) これまで赤ワインに認められたALがELより小さくなる不合理な結果は,実際よりも3受容体のSO2結合率を高く見做していたことに原因していることを明らかにした.

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© 社団法人 日本食品科学工学会
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