日本食品科学工学会誌
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製パンにおける食塩量の低減と塩化カリウム代替の影響
パンにおける食塩代替品の利用に関する研究(第1報)
高野 博幸宮崎 祐一日野 明寛朝来 荘一田中 康夫
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1996 年 43 巻 5 号 p. 610-616

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抄録
食パンの製造に使用されている食塩2%を,作業性,製パン性,パン品質などを損なうことなくどの程度まで低減可能か,さら塩化カリウムとの併用の可能性について検討し,以下の結果を得た.
(1) 食塩には生地物性改良効果が有り,量としては少なくとも1.25%が必要と思われた.しかし,塩化カリウムには明確な生地物性改良効果は認められなかった.
(2) 食塩および塩化カリウムは,無糖および低糖パン生地の発酵を適度にコントロールする効果がある.
(3) 低糖パン生地膨張力測定の結果,食塩あるいは塩化カリウムは少なくとも1%必要と思われた.
(4) パン体積は食塩あるいは塩化カリウム1.5%使用で最大となる.しかし,塩化カリウム1%以上の単独使用パンは苦味を呈し,食用として不適格であった.一方,食塩はパンに風味を付与する効果があり,最低1%が必用と思われた.
(5) 官能検査の結果,食塩1%と2%使用パンとの間に有意な差がなく,食塩1%と塩化カリウム0.25-0.5%を併用しても,食塩1.25-1.5%使用パンとの間に有意な差がなかった.
(6) 食塩はパンの貯蔵性に対しても延長効果が有り,食塩1.25%使用あるいは食塩1%と塩化カリウム0.25-0.5%を併用で5日間貯蔵可能で,パンの老化度にも大差がなかった.
以上の結果から,食パンの製造原料として使用されている食塩2%は1.25%まで低減可能で,食塩代替として塩化カリウム0.25-0.5%を使用するなら食塩は1%まで低減可能と思われた.
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© 社団法人 日本食品科学工学会

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