日本食品科学工学会誌
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43 巻, 5 号
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  • 山根 恒夫
    1996 年 43 巻 5 号 p. 463-471
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
  • 三木 英三, 造田 英孝, 山野 善正
    1996 年 43 巻 5 号 p. 472-479
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    生地の粘着性の測定を試みるとともに,粘着性(付着性,付着力,伸びの各パラメーター)に及ぼす生地の調製条件の影響を検討し次の結果を得た.
    (1) 生地の粘着性パラメーターは,変形率あるいは圧縮で発生する応力を増加させると増大した.
    (2) 加水量の増加により生地の付着性と伸びは増加したが,付着力は47.5%まで増加しそれ以上の添加では減少した.生地の粘着性には生地の粘弾性と生地表面のぬれが大きく関与すると考えられる.
    (3) 塩化ナトリウムの添加で粘着性のパラメーターは増加し,1~6%添加でほぼ一定値を示したが,8%添加で減少した.
    (4) 混捏時間とともに生地の粘着性の各パラメーターは10分まで増加し,それ以上の混捏で減少した.
    (5) 生地の粘着性の各パラメーターは生地pH 6付近で最大値を示した.
    (6) タンパク質含量が増加すると,付着性と伸びは増加したが,付着力は減少した.
    (7) 生地を熟成すると粘着性パラメーターは2ないし4時間まで増加し,以後減少した.めん帯熟成では,塩化ナトリウム無添加生地では時間とともに粘着性パラメーターは増加したが,塩化ナトリウム添加生地では粘着性パラメーターの変化は小さかった.
  • 三木 英三, 若林 滋, 山野 善正
    1996 年 43 巻 5 号 p. 480-487
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    (1) 茹めんの粘着性の各パラメーター値は,変形率あるいは圧縮で発生する応力を増加させると増大した.
    (2) 茹で時間の増加とともにめんの粘着性の各パラメーター値は減少した.茹めん表面の走査型電子顕微鏡のX線モード観察により,表面の凹凸状態が評価できた.
    (3) 生地へ塩化ナトリウムを添加すると,茹めんの粘着性は減少した.
    (4) 茹めんの粘着性は生地混捏時間の増加とともに10分まで増加し,それ以上の混捏で減少した.
    (5) 生地を熟成すると茹めんの付着性と伸びは減少したが,付着力は生地熟成2時間で高い値を示した.
    (6) 茹めんの粘着性は放置によって増加した.
    (7) 機器測定による物性値間では付着性と付着力,摩擦力と付着力との間には高い相関がみられた.官能評価による茹めんのぬめりは粘着性および摩擦力と負の,総合評価と正の相関を示した.茹めんの表面状態の総合評価は付着性,付着力および摩擦力と高い負の相関がみられた.
  • 飯塚 俊輔, 望月 義範, 田代 有里, 小川 廣男, 水野 治夫, 磯 直道
    1996 年 43 巻 5 号 p. 488-492
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    豚肉(スペアリブ)の塩濃度は,4%食塩添加によって生肉の0.5%から塩蔵1日後の3.1%へ増加し,その後はほぼ一定となった.示差走査熱量(DSC)測定の結果から,塩蔵による肉の変性は主としてミオシンに生じることがわかった.変性の進行につれて,エンタルピー変化ΔH (mcal/粗タンパク質mg)は1.212から塩蔵3日後の0.830まで急減し,その後は塩蔵27日後の0.736まで徐々に減少した.試料の弾性率,粘度,破断強度は全体として,塩蔵中に増加した.豚肉ペーストの加熱中の動的剛性率は塩蔵6日後は52~58℃で減少する傾向を示した.この結果はミオシンの熱変性による試料の構造変化のためと考えられる.
  • 阿知和 弓子, 樋廻 博重, 勝崎 裕隆, 賀田 恒夫, 小宮 孝志
    1996 年 43 巻 5 号 p. 493-501
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    青果物62種類及び樹木,野草41種類のジュースによるソルビン酸と亜硝酸の反応液の変異原性に対する影響をRec-assay法を用いて検討した.強い抑制効果を示したシブガキジュースについてはモルホリンと亜硝酸の反応におけるニトロソモルホリン生成の抑制効果とその作用機作についても調べ,以下のような結果を得た.
    (1) ソルビン酸と亜硝酸の反応液の変異原性に対する影響についてはシブガキジュースに特に強い抑制効果が認められた.樹木,野草ではイヌタデ,アオキにも著しい抑制効果が認められた.
    (2) シブガキジュースの超遠心分離画分FIIIにソルビン酸と亜硝酸の反応液の変異原性に対する強い抑制効果が認められた.
    (3) 強い変異原性抑制効果を示したシブガキジュースの超遠心分離画分FIIIは種々の蛋白分解酵素処理してもその効果は強く現れたことから,この抑制作用物質は蛋白質ではないと考えられる.
    (4) モルホリンと亜硝酸の反応においてシブガキジュースによるニトロソモルホリンの生成に対する抑制効果は原液1mlで約90%, 0.5mlで約82%, 0.25mlで約55%, 0.1mlで約10%であった.
    (5) ソルビン酸と亜硝酸およびモルホリンと亜硝酸の反応液にシブガキジュースを添加することによって変異原性が抑制される理由はシブガキジュース成分の柿タンニンが亜硝酸を捕捉することによるものと推定した.
  • 食用油脂の新規な水素添加(第3報)
    武谷 宏二, 川成 真美, 小西 寛昭, 中島 一郎, 冨士川 計吉
    1996 年 43 巻 5 号 p. 502-509
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    本報告を次のように要約した.
    (1) 各種水素貯蔵合金のうち,LaNi5系合金が油脂の水添反応を生起した.これは,LaNi5系合金が六方晶型の結晶構造であることに起因するものと考えられる.
    (2) 反応系に添加した通常水添用のニッケル触媒は,水素貯蔵合金による水添反応を加速した.
    (3) 水素の吸蔵と排出の繰り返しにより成される微粉化処理は,合金表面の反応活性点の増加および油脂との接触頻度の増大をもたらし,水素貯蔵合金の触媒効果を高めた.
    (4) 水素貯蔵合金は,油脂中でも一般的な水添度の水添反応を行うのに充分な水素量を再吸蔵することが可能であり,また,繰り返し使用することもできる.
    (5) 水素貯蔵合金LaNi4.0 Al1.0を用いた油脂の水添では非選択的な反応が進行し,トランス型脂肪酸含量が少なく,温度依存性の小さい物性を備えた水添油脂を生成することができる.
  • 植村 邦彦, 五十部 誠一郎, 今井 哲哉, 野口 明徳
    1996 年 43 巻 5 号 p. 510-519
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    平行平板電極を用いた味噌の通電加熱を行った際,試料内部に生ずる温度勾配について有限要素法を用いて検討したところ,以下の事柄が判明した.
    (1) 試料の温度変化に対して試料の物理変数の中で電気伝導率が最も大きな影響を受けた.
    (2) 電気伝導率が変化することにより電位勾配が変化することを考慮した数学モデルが良く実験値と一致した.
    (3) 試料の電気伝導率が温度により変化するため,電界方向に垂直な方向の温度分布は拡大したが,電界方向の温度分布は抑制された.
    (4) 高電圧を印加した,短時間処理による温度分布は,低電圧を,長時間処理のときよりも中心部と外側の温度差が大きかった.
  • 関 英治, 筬島 克裕, 松藤 寛, 松井 利郎, 筬島 豊
    1996 年 43 巻 5 号 p. 520-525
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    食品タンパク質のアルカリプロテアーゼ分解物から味覚に優れたACE阻害活性を有する短鎖ペプチド混合物を調製し,その消化管プロテアーゼの影響とin vivoにおける効果を調べ,以下の結果を得た.
    (1) イワシ由来短鎖ペプチドは,消化管プロテアーゼに対しての消化耐性を有し,イワシ落し身の人工消化試験によって得られた分解物のACE阻害活性が低かったことから,本外来性短鎖ペプチドを摂取する有用性を示した.
    (2) イワシ由来短鎖ペプチドは,SHRへの静脈内投与により,血圧降下作用が明らかに認められた.
  • 乾燥昆布の調味成分による軟化に関する研究(第5報)
    中川 禎人, 奥田 弘枝
    1996 年 43 巻 5 号 p. 526-534
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    アルギン酸カルシウムからのカルシウム脱離に及ぼす有機酸のナトリウム塩の影響について検討した.
    1. ナトリウム塩の濃度に関係なく,Ca-Algからのカルシウム脱離は浸漬後数分で平衡に達した.
    2. いずれのナトリウム塩の場合も,カルシウム脱離に及ぼす温度の影響はそれほど大きくなかった.
    3. Ca-Algの重合度が小さくなるほどカルシウム脱離率が大きくなっチたが,その度合いはそれほど大きくなかった.
    4. カルシウム脱離に及ぼす影響は,大きい順に四つのグループに大別できた.一番目はクエン酸Na2,クエン酸Na3,二番目はリンゴ酸Na2,酒石酸Na2,三番目は乳酸Na,コハク酸Na2,酒石酸Na,クエン酸Na,四番目は酢酸Naであった.
    5. カルシウムイオンに対するイオン選択係数は,クエン酸Na3,クエン酸Na2,リンゴ酸Na2,酒石酸Na2が他に比べて著しく大きかった.
  • 小川 哲郎, 一色 賢司
    1996 年 43 巻 5 号 p. 535-540
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    アリルイソチオシアネート(AIT)を含むハーブの揮発性成分による微生物の増殖抑制の可能性を追求すると共に,これらの揮発性成分の併用による微生物制御を試みた.
    AITを除く14種の揮発性成分のうち,真菌に対してはアルデヒド類のみが抑制効果を示し,枯草菌に対してはアルデヒド類および炭化水素類が抑制効果を示した.特にサリチルアルデヒドは,供試した真菌,細菌いずれの増殖も抑制した上,細菌に対してはAITと同じ10.0mgの添加で抑制効果が認められた.また,カルバクロールは,AITでは抑制効果の弱かった黄色ブドウ球菌に対し増殖抑制効果を示した.AIT 3.0mgとカルバクロールあるいはサリチルアルデヒド5.0mgを併用することにより,供試菌すべての増殖を抑制することが可能であり,それぞれの使用量も半分以下に軽減された.AITとこれら2種の揮発性成分の組み合わせによる餅の保存試験では,40日経過後においてもカビの発生は認められなかった.
    AIT臭のマスキングについて検討した結果,バニラ及び柑橘系オイルで高いマスキング効果が認められた.
  • 薛 彦斌, 久保 康隆, 中村 怜之輔
    1996 年 43 巻 5 号 p. 541-545
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    バナナの流通環境改善の基礎資料として,湿度条件がフィリピン産バナナ(Musa AAA group, Cavendish subgroup cv. Giant Cavendish)の成熟特性に及ぼす影響について調査した.
    呼吸のクライマクテリック・ライズやエチレン生成開始の時期は湿度処理区間でほとんど差はみられなかったが,その後は低湿条件で呼吸活性やエチレン生成が促進された.着色の進行も低湿条件で速くなった.また,低湿条件で成熟の進展以上に軟化の進行が速くなる特徴が認められた.内容成分からみると,クエン酸及びリンゴ酸含量が成熟開始後急増して呼吸のクライマクテリック・ピークに先立って最大値を示した後減少したが,この最大値に達する時期が低湿条件では早くなることが認められた.
    このようなことから,低湿条件で水分損失が大きくなることが一種のストレスとして作用して,バナナの成熟に対して促進的に作用するものと考えられた.
  • 福岡県の豆腐味噌漬けに関する研究(第1報)
    舟木 淳子, 矢野 みどり, 早渕 仁美, 荒井 綜一
    1996 年 43 巻 5 号 p. 546-551
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    福岡県産豆腐味噌漬けの熟成過程における呈味,テクスチャーおよびタンパク質の変化について検討し,次のような結果を得た.
    (1) 豆腐味噌漬けは漬け込み日数が長くなるほどチーズ様の味が増し,柔らかくなることが官能検査およびレオメーターによる咀嚼試験から確かめられた.
    (2) 豆腐の総窒素に対する水溶性窒素の割合(タンパク質溶解率)は漬け込み前の水切り豆腐で13%であったものが漬け込み後2日で41%に達し,以後やや増加した.TCA可溶性画分中の遊離アミノ酸は熟成に伴って著しく増加し,漬け込み8日で水切り豆腐の26倍に達した.主な遊離アミノ酸はアルギニン,グルタミン酸,リジン,ロイシン等であった.
    (3) 電気泳動によりタンパク質の分解を調べた.熟成に伴ってβ-コングリシニンサブユニットおよびグリシニンの酸性サブユーットに対応する各バンドが消失し,20kd以下のバンドが増加した.
    (4) 走査電子顕微鏡により構造的変化を観察したところ,漬け込み日数の増加に伴ってタンパク質の網目構造が次第に崩れ,組織間の空間の拡がりが認められた.
  • 増田 知子, 高橋 是太郎, 羽田野 六男
    1996 年 43 巻 5 号 p. 552-556
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    銀毛の秋サケの筋肉を加熱調理した場合にベニサケのそれよりも退色が著しい理由を筋肉のa値とカロテノイド量との関係,加熱前後におけるその量的変化,塩溶性タンパク質+基質タンパク質画分ならびに水溶性タンパク質画分の加熱前後における色調の変化より検討した.その結果,秋サケではベニサケに比して同量のカロテノイドの減少に対してa値,b値共に減少が大きいこと,a値の大きい場合と小さい場合とではa値の変化に対する視覚感度が異なり小さい場合の方が鋭敏である事,さらに秋サケでは加熱によって塩溶性タンパク質+基質タンパク質画分におけるa値,b値の減少が著しいこと等が複合して退色に至るものと考えられた.
  • 吉田 千秋, 矢埜 みどり, 団野 源一
    1996 年 43 巻 5 号 p. 557-561
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    小麦粉を水で懸濁して得たグルテン(対照グルテン)およびNEMI処理したグルテン(NEMIグルテン)の凍結および凍結乾燥にともなう物性変化を調べた.両グルテン共,凍結乾燥すると伸張性は低下し,システインの添加により回復するが,低下および回復の程度は対照グルテンの方が著しかった.凍結乾燥または凍結によりSDS不溶性画分が増加するが対照グルテンの方が多かった.SDS不溶性画分は分子間SS結合による高分子重合体であるが,NEMIグルテンは凍結してもSDS不溶性画分の生成はわずかであった.しかし,NEMIグルテンのSDS可溶性画分は高分子グルテンタンパク質が増加するため高粘調性を示した.これらのことより凍結および凍結乾燥によりグルテンタンパク質のSS重合体が形成されるためグルテンの伸張性が低下すると考えられる.
  • 三木 英三, 栗坂 貴之, 山野 善正
    1996 年 43 巻 5 号 p. 562-568
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    めんの乾燥中の力学的性質の変化および茹めんの物理的性質の変化に及ぼす調製条件の影響ついて検討し,次の結果を得た.
    (1) 乾燥中のめんの水分含量に対する曲げ強度と曲げヤング率の対数値は乾燥初期に急激に増加し,漸次緩慢に,上に凸の形で増加した.しかし,生地を酸化あるいは生地pHを7よりアルカリ側にしためんでは,曲げ強度および曲げヤング率は凹状に増加した.
    (2) 乾めんの曲げ強度および曲げヤング率は食塩や乳化油脂を添加すると減少した.生地の加水量42.5-45.0%で乾めんの曲げ強度は高い値を示したが,曲げヤング率に対する加水量の影響は小さかった.生地の熟成および生地の酸化あるいは還元が乾めんの力学的強度に対する影響は小さかった.生地のタンパク質含量が増加すると力学的強度は増加した.
    (3) 茹めんの切断強度は乾燥の進行とともに水分含量25%付近まで低下し,さらに乾燥すると再び増加した.食塩添加量が増加すると,茹めんの切断強度が最低値を示す乾燥中のめんの水分含量が低下した.生地の熟成は乾燥中のめんの水分含量25%以下で効果がみられ,茹めんの切断強度は増加した.生地の酸化と還元が乾燥中のめんの茹めんの切断強度に対する影響は小さかった.乳化油脂を添加すると茹めんの切断強度は減少した.生地pHがグルテンの等電点の7付近からアルカリ側の生地から調製した乾燥工程中のめんの茹めんの力学的強度は,より低いpHの生地からのめんよりも高い値を示した.
  • 受田 浩之, 飯田 倫子, 沢村 正義, 楠瀬 博三
    1996 年 43 巻 5 号 p. 569-574
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    3種類の褐藻,マコンブLaminaria japonica Areschoung,カジメEcklonia cava Kjellman,イソモクSargassum hemiphyllumから次の3種類の酸加水分解処理(0.2N H2SO4), (a): 30℃,16時間,(b): 50℃, 6時間,(c): 100℃,2時間を経てアルギン酸カリウム(K-Alg)を抽出し,それらの収量,化学的性質とin vitroにおけるNaイオン結合能との関係を調べた.
    (1) 収量は乾燥重量当たり,マコンブ30~45%,カジメ22~31%,イソモク18~28%で,すべての種において最高収量は(b)の酸処理を行った場合に得られた.
    (2) マコンブ,カジメ由来のK-AlgのM/G比は1.0~1.2であるのに対して,イソモク由来のK-Algは0.3~0.4であった.酸加水分解処理により,K-Algの分子量は1.5×104~1.5×105以上の範囲で変化した.
    (3) 平衡透析法により上記のK-AlgのNaイオン結合能を測定したところ,M/G比並びに分子量が異なるにもかかわらず,それらのNaイオン結合能に差は認められなかった.従ってK-AlgのNaイオン結合能は,その一次構造に依存していないことが明らかとなった.おわりに,褐藻試料を御供与下さいました高知大学海洋生物教育研究センター・大野正夫教授に深く感謝申し上げます.
  • 村田 裕子, 西岡 不二男
    1996 年 43 巻 5 号 p. 575-581
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    マイワシから高品質の落し身を製造することを目的として,赤身魚のすり身の品質改善のために導入された減圧晒しを落し身製造に適用することを試みた.落し身に等量の0.6%重曹-0.6%ピロリン酸ナトリウム水溶液を混合して10mmHgの減圧下に20分間置いた後,常圧にもどし,遊離した脂肪および過剰の水分を遠心分離で除去した(この処理を減圧処理と呼ぶ).この1回の操作で,原料中の脂肪の35%を除くことができた.減圧処理した落し身は貯蔵(5℃,6日間)後も水分,pH,筋原繊維タンパク質の溶解度がよく保たれた.また,この落し身を材料としたハンバーグはあっさりした味で魚臭もほとんどなく,カマボコとハンバーグの中間的なテクスチャーであった.
  • 品川 弘子, 西山 隆造, 岡田 早苗
    1996 年 43 巻 5 号 p. 582-585
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    しば潰の酸味や色などの熟成に関与する乳酸菌の役割を検討するため,京都の洛北大原の地で漬けたしば漬を採取し,漬け込み後1日から5日,20日,30日,40日までの各5段階の試料から分離した乳酸菌について形態的および生理的諸性質によって同定を行った.
    全期間を通してL. brevisが共通にみられ,漬け込み1日にはL. curvatusおよびLeuc. mesenteroidesが現れ,5日から30日まではL. plantarumが優勢であったが,発酵後期の40日になるとL. plantarumは減少し,L.casei subsp. pseudoplantarumが優勢となった.ホモ発酵型乳酸菌が83%を占めた20日には,しば漬の色調は特有の鮮やかな赤紫色に安定し,pHは3.2,酸度(乳酸として)は2.1%であった.
    しば漬製造には,主要乳酸菌のうち特にL. plantarumが20日までに十分生育し,本菌が生成する乳酸が一定以上の酸度に高まることが必要であり,酸味成分の賦与と共に特有の色調形成のためにも重要であることが本研究によって初めて明らかにされた.
  • 梶本 五郎, 山口 真季, 吉田 弘美
    1996 年 43 巻 5 号 p. 586-592
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    合成着色料である赤色104号(フロキシン)と天然系の着色料であるβ-カロテンについて,油脂中での分解,ならびに油脂の酸化生成物による分解について検討した.
    (1) 赤色104号は保存中オリーブ油,大豆油,鯨油などいずれの油脂中でも比較的すみやかに分解をうけ,大豆油,オリーブ油中では鯨油中よりもわずかに分解が少ない程度であった.
    (2) β-カロテンは保存に伴い分解するが,中でも鯨油中で最も分解されやすく,ついで大豆油,オリーブ油中の順であった.いわゆる油脂の酸化度の高い鯨油中でβ-カロテンの分解量が多く,逆に酸化度の低いオリーブ油中では分解量が少なかった.
    (3) 赤色104号やβ-カロテンは過酸化物価の高い油脂中ですみやかに分解した.
    (4) 過酸化物価695meq/kgの酸化油より過酸化物を除去した過酸化物熱分解処理中での赤色104号とβ-カロテンの分解割合は,過酸化物を除去しない酸化油に比べて低くなったが,新鮮油よりも高かった.
    (5) 過酸化物熱分解油より分別した酸化酸(石油エーテル不溶性の酸化脂肪酸)により赤色104号およびβ-カロテンはすみやかに分解された.
  • 浅野 正博, 後藤 直子, 一色 賢司
    1996 年 43 巻 5 号 p. 593-597
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    (1) ジャガイモに含まれるα-ソラニンならびにα-チャコニンのHPLCによる簡易分析法の検討を行った.分析カラムとしてInertsil C8,移動相として20mMリン酸緩衝液(pH=6.8)+アセトニトリル(67:33)混合溶液を使用し良好なクロマトグラムを得た.
    (2) ジャガイモからα-ソラニンならびにα-チャコニンを抽出する方法の検討を行い,抽出溶液にメチルアルコールを用いた簡易な方法を確立した.
    (3) ジャガイモの各部位よりGAの定量を試みたところ,細根から最も高濃度のGAが検出され,葉,塊茎(表層部),茎からもGAが検出された.可食部である塊茎(髄質部)からは,GAは検出されなかった.
  • 坂本 浩子, 山崎 勝利, 加賀 千文, 山本 幸子, 伊藤 隆二, 黒澤 康之
    1996 年 43 巻 5 号 p. 598-602
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    準強力粉を主原料として中華麺を調製し,麺の物性に対するMTGaseの添加効果を調べた.
    (1) かんすいの添加量を調整し生麺調製時のpHを約6~10と変化させ,ゆで麺,酸処理麺の破断強度に及ぼす影響を調べた結果,MTGase無添加麺ではpHが高いほど破断強度が高かったが,MTGase添加系ではpH 6~8で破断強度増加効果が得られた.
    (2) pH 8.0で生麺を調製し, MTGaseの添加量が破断強度に及ぼす影響を調べた結果,MTGase 0~7U/gproteinで酵素濃度の増加とともにゆで麺の破断強度が増加した.ゆで麺を酸処理またはレトルト処理した場合,調べた0~10U/g proteinの範囲内で酵素濃度の増加とともに破断強度が増加した.
    (3) 生麺の断面を走査型電子顕微鏡により観察した結果から,これらMTGaseによる効果はG-L架橋形成によりグルテンのネットワーク構造が補強されたためと推定された.
    (4) 以上より,MTGaseを使用するとゆで麺の破断強度が増加すること,さらに酸処理やレトルト処理をしても破断強度の低下が抑制されることが判明した.
  • 山中 克人
    1996 年 43 巻 5 号 p. 603-609
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    手延素麺「揖保乃糸」の貯蔵における油脂の酸化程度は,油脂量,乾燥法及び微生物について,その影響を試験した結果から,次のことが明らかになった.
    (1) AVは手延素麺製造直後から増加し続けたが,POVは複雑な挙動が観察されたが,貯蔵期間の長期化とともに減少した.
    (2) 製造時,使用する綿実油量はPOVの生成に対して影響を与えなかったが,乾燥法では外干法の方が内干法よりもPOVの生成が抑制された.AVは,塗布油量の多少および乾燥法の影響を受けた.油量を増加して内干法を使用した時,AVは低価であった.
    (3) POVの低い手延素麺は,貯蔵中の水分を調節して,15%に保持すれば良い.
    (4) POVは手延素麺に生息している微生物の影響を受ける.Eurotium sp.を加えて製造した手延素麺のPOVは製造後2ケ月以上の貯蔵により安定化した.Eurotium, sp.の水溶性代謝物もPOVを抑制した.
    (5) 手延素麺ではAVおよびPOV,脂肪酸組成の間には相関は認められなかった.
  • パンにおける食塩代替品の利用に関する研究(第1報)
    高野 博幸, 宮崎 祐一, 日野 明寛, 朝来 荘一, 田中 康夫
    1996 年 43 巻 5 号 p. 610-616
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    食パンの製造に使用されている食塩2%を,作業性,製パン性,パン品質などを損なうことなくどの程度まで低減可能か,さら塩化カリウムとの併用の可能性について検討し,以下の結果を得た.
    (1) 食塩には生地物性改良効果が有り,量としては少なくとも1.25%が必要と思われた.しかし,塩化カリウムには明確な生地物性改良効果は認められなかった.
    (2) 食塩および塩化カリウムは,無糖および低糖パン生地の発酵を適度にコントロールする効果がある.
    (3) 低糖パン生地膨張力測定の結果,食塩あるいは塩化カリウムは少なくとも1%必要と思われた.
    (4) パン体積は食塩あるいは塩化カリウム1.5%使用で最大となる.しかし,塩化カリウム1%以上の単独使用パンは苦味を呈し,食用として不適格であった.一方,食塩はパンに風味を付与する効果があり,最低1%が必用と思われた.
    (5) 官能検査の結果,食塩1%と2%使用パンとの間に有意な差がなく,食塩1%と塩化カリウム0.25-0.5%を併用しても,食塩1.25-1.5%使用パンとの間に有意な差がなかった.
    (6) 食塩はパンの貯蔵性に対しても延長効果が有り,食塩1.25%使用あるいは食塩1%と塩化カリウム0.25-0.5%を併用で5日間貯蔵可能で,パンの老化度にも大差がなかった.
    以上の結果から,食パンの製造原料として使用されている食塩2%は1.25%まで低減可能で,食塩代替として塩化カリウム0.25-0.5%を使用するなら食塩は1%まで低減可能と思われた.
  • 渡辺 慶一, 廣田 才之, 高橋 文次郎
    1996 年 43 巻 5 号 p. 617-621
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    オクラの果色が異なる2品種を供試し,果実のクロロフィルとカロテノイド組成をカラムクロマトグラフィー,薄層クロマトグラフィー(TLC)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した.カロテノイドはカラムの吸着順位,吸収曲線を参考として同定した.その結果,緑色系と紫色系のオクラ果実ではクロロフィル,カロテノイド含量に相違があることがわかった.クロロフィルとカロテノイドの種類は以下のとおりである.
    (1) 緑色系の'ベターファイブ'は主要な色素としてクロロフィルa 470μg/gおよびb 190μg/gを含有していた.カロテノイドはβ-カロテンを11μg/g,キサントフィル類を43μg/g程度含有していた.そのほか少量のα-カロテンが検出された.
    (2) 紫色系の'ベニー'ではクロロフィルはa 120μg/g, b 60μg/gを含有していた.カロテノイドはβ-カロテンを4μg/g,キサントフィル類27μg/g程度含有していた.そのほか痕跡程度のα-カロテンが検出された.また,紫色系の'ベニー'ではアントシアニンが検出された.
    (3) クロロフィル含量の多い'ベターファイブ'でカロテノイド含量は高く,クロロフィル含量の少ない'ベニー'ではカロテノイド含量が低いことが認められた.
    (4) キサントフィル類はネオキサンチン,ビオラキサンチン,ルテインエポキシドおよびルテインと推定された.
  • 馬場 紀子, 新本 洋士, 小堀 真珠子, 津志田 藤二郎
    1996 年 43 巻 5 号 p. 622-628
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    数種の農産物の非透析画分について,マウスメラノーマ細胞のメラニン産生,ヒトーヒトハイブリドーマHB 4 C 5の抗体産生,ヒト単芽球様細胞U-937の分化誘導に対する効果を検討した.
    茶,ナス,キウイフルーツ,ニンジン,ホウレンソウの抽出物にはいずれもメラニン生産を抑制する効果が認められた,最も効果が高かったのは茶抽出物であり,培地中の終濃度を150μg/mlとして4日間培養した場合,細胞内のメラニン含量をコントロールの46%に抑制した.
    茶の非透析画分はヒトーヒトハイブリドーマHB 4 C 5のIgM産生を促進した.
    加工処理したホウレンソウ抽出物はU-937細胞の細胞分化を誘導した.活性が認められた分画物は熱に安定であると考えられた.
  • 田中 史彦, 村田 敏
    1996 年 43 巻 5 号 p. 629-633
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    果汁の凍結過程を非定常熱伝導理論により解析した.相変化を含む熱伝導方程式は温度に強く依存する熱物性値をパラメータとして含むため非線形となる.これを直交選点法により数値計算した.これによりリンゴ,ミカン,トマトの各果汁の冷却過程を解析し,実測値と計算結果の比較を行った.その結果,両者は全般にわたって良く一致し,著者らが先に報告した凍結果汁の解凍解析結果より良好な適合性を得た.本研究はモデル食品の冷凍・解凍の両者に有効な解析手法を提供したものである.
  • 磯部 由香, 戸山 陽子, 皆森 真由美, 横井川 久己男, 遠藤 金次, 河合 富佐子, 河合 弘康
    1996 年 43 巻 5 号 p. 634-641
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    Bacillus circulansの生産する高粘性多糖(BPS)の物理化学的性質を,キサンタンガム,ローカストビーンガム,グアガム,アルギン酸ナトリウムおよびカルボキシメチルセルロース(CMC)のそれらと比較検討した.
    BPSは比較したどの多糖類よりも保水性に優れ,乳化安定性もキサンタンガムについで優れていた.
    1.0% BPS水溶液の粘度は約900cPで,他の高粘性多糖と同程度もしくはそれ以上の粘性を示した.
    BPS水溶液の粘性はpH 5~9でほとんど変化が見られず,80℃までの加熱には比較的安定であった.また,グルコースの添加により粘度は増大し,クエン酸の添加により粘度が減少した.ローカストビーンガムやグアガムなどのガラクトマンナン系の多糖とBPSとの併用により増粘効果がみられた.
    BPSはフィルム形成能を持ち,作成したフィルムのヤング率はCMCやグアガムのフィルムよりも危険率5%以下で有為に高かった.
  • 果実・野菜のフラボノイドに関する研究 第2報
    津志田 藤二郎, 鈴木 雅弘
    1996 年 43 巻 5 号 p. 642-649
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    北海道産の黄色タマネギ,赤色タマネギ及び白色タマネギのフラボノール含量を測定したところ,生鮮重当たり黄色タマネギではケルセチン-3, 4'-ジグルコシドが16.8mg/100g,ケルセチン-4'-グルコシドが18.5mg/100g,セルセチン-3-グルコシドが0.8g/100g,イソラムネチン-4'-グルコシドが2.9mg/100g存在していた.赤色タマネギでは黄色タマネギに比べて3倍量のフラボノール配糖体が検出されたが,白色タマネギには検出されなかった.また,フラボノール配糖体は外側の鱗茎に多く存在した.
    一方,フラボノール配糖体の代謝に関与する酵素としては,2種のフラボノールグルコシダーゼと2種のUDP-グルコース:フラボノールグルコース転移酵素が検出された.これらはそれぞれ至適pHが異なり,3-β-グルコシダーゼでは4.5, 4'-β-グルコシダーゼでは7.0であり,3-β-グルコース転移酵素では6.0, 4'-β-グルコース転移酵素では8.0であった.使用した全ての品種において,ケルセチン-4'-β-グルコース転移酵素の活性が4'-β-グルコシダーゼの活性に勝っていることから,ケルセチン-4'-β-グルコシドは蓄積される方向にあることが分かった.一方,ケルセチンの3位においては逆にグルコース転移酵素がグルコシダーゼの活性より弱いため,ケルセチン-3-β-グルコシドは蓄積しにくいことが分かった.
    また,ケルセチンの3位に糖が結合したフラボノール配糖体には4'-β-グルコース転移酵素が作用できないため,タマネギのケルセチン-3, 4'-ジグルコシドは,ケルセチン-4'-β-グルコシドに糖転移が起こることにより合成されることが推定できた.
  • 小林 幹彦
    1996 年 43 巻 5 号 p. 650-651
    発行日: 1996/05/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
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