日本食品科学工学会誌
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梅漬塩蔵中の変敗原因となる産膜酵母の発生機構の解析
恩田 匠乙黒 親男飯野 修一後藤 昭二
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1997 年 44 巻 7 号 p. 463-469

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抄録
梅漬の塩蔵工程の産膜汚染過程から経時的に酵母を分離・同定し,酵母フローラの消長と産膜汚染中の成分変化を調べ,以下の結果を得た.
(1) 梅漬塩蔵工程中に出現する主要汚染酵母は,K. apiculata, P. anomala, C. guilliesmondiiおよびD. hanseniiの4菌種であった.
(2) 塩蔵中の酵母フローラの変化は,塩蔵初期にはK. apiculataが,産膜が発生する塩蔵3週間目以降にはP. anomala, C. guilliermondiiおよびD. hanseniiが主要な菌叢を示した.3カ月後には,ほとんどD. hanseniiのみが検出された.
(3) 塩蔵中の梅酢は産膜酵母の増殖に伴って,クエン酸およびリンゴ酸は顕著に減少したが,食塩濃度には変化が認められなかった.これらの有機酸の減少は,主にP. anomalaおよびC. guilliermondiiにより資化されたことが明らかになった.
(4) 梅漬の産膜汚染を誘導する役割を果たす酵母は,有機酸の資化能が強いP. anomalaであることがわかった.本菌種の増殖に伴って有機酸が資化され,pHが上昇することにより,塩蔵後期には耐塩性のD. hanseniiが優位な菌叢を占め,産膜汚染がさらに進行することが明らかとなった.
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