日本食品科学工学会誌
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近赤外分光法を用いた魚肉の調味漬製造システム
勝部 拓矢細谷 達夫山崎 幸一杉中 克昭岩本 正俊
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1998 年 45 巻 3 号 p. 216-220

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抄録

本研究では魚の調味漬工程において,近赤外分光分析計により調味液成分をリアルタイムで測定し,ファジィ制御技術で調味液濃度を一定に保つ工程管理システムの開発を行った.
開発にあたって,まずビーカー規模で調味漬実験を行い,工程中における成分濃度の変化等について検討した.調味液を繰り返し使用する場合,減少した成分を補うことで,魚肉への吸収を一定に保ち,漬け時間の短縮が可能となった.また生菌数の増加を抑え,繰り返し使用が可能であった.よって濃度調整システムを使うことで,より品質の安定した製品を製造することができると考えられた.
近赤外分光法による調味液各成分の分析では,キャリブレーションにおいてスペクトルを二次微分処理し,各二波長を採用することで,精度の高い検量線を得ることができた.この検量線は,その精度から考えて工程管理に十分応用可能であった.
濃度調整システムの制御用ソフトは,パソコン画面や濃度の設定等,実際の使いやすさを工夫しており,誰でも簡単に使える様になっている.また濃度調整の手法として,ファジィ制御技術を用い,正確な濃度調整を可能にした.
実際に濃度調整システムを用いて,100l規模で調味漬実験を行ったところ,調味液中の各成分濃度はほぼ一定に保たれ,本システムが有効に機能していることが示された.従来の静置方式では,魚肉から溶出する水分量の違い等により,製品にばらつきがでやすかった.本システムの使用は,品質の安定した製品の製造につながり,また調味液の効率的な使用により,コストの削減と環境保全にも役立つと考えられた.

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© 社団法人 日本食品科学工学会
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