日本食品科学工学会誌
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コンブの揮発性ヨウ素化合物の同定とその香調
高橋 英史隅谷 栄伸稲田 有美子森 大蔵
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2002 年 49 巻 4 号 p. 228-237

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抄録

コンブは,ヨウ素のよき供給源であるが,その揮発性ヨウ素化合物を同定した報告は見られない.北海道産天然コンブの天日乾燥品であるマコンブ(Laminaria japonica Areschoug),リシリコンブ(Laminaria ocho tensis Miyabe),ミツイシコンブ(Laminaria angustata Kjellman)を試料とし,それらから漂う揮発性成分はダイナミックヘッドスペースサンプリング法(DHS法)で,水分共存下で揮発する成分は減圧連続蒸留抽出法(減圧SDE法)で捕集し,キャピラリーGC-MSで同定した.
DHS法で,3種類のコンブいずれからも1 iodopropane, 2-iodopropane, 1-iodopentane, 1 iodooctaneが揮発していることを確認した.減圧SDE法では,3種類のコンブいずれからも1-iodopentaneと1-iodooctaneが揮発していることを確認した.乾燥コンブあるいは出汁のような水分共存下のコンブからもヨウ素化合物が揮発していることが明らかとなった.
乾燥コンブにおけるGC-sniffingの結果,1 iodooctaneのみ香調が確認された.3種類のコンブいずれにおいても1-iodooctaneは“乾燥コンブと海苔をあわせたような香調”であった.乾燥マコンブのGC-sniffingにて,nonanolは花びら様,(E)-2-octenalは乾燥コンブと醤油をあわせたような,(E)-2-nonenalは酸味を帯びたコンブ様,(E)-2-decenalはコンブ出汁様,1-octen-3-olは乾燥コンブ様,(E)-2-nonen-1-olはコンブの佃煮様,(E, Z)-2, 6-nonadien-1-olはキュウリ様の香であった.
減圧SDE法で同定された,マコンブの揮発性成分のうち,オダーユニットの対数が2以上のものは,1-iodooctane, nonanal, (E)-2-nonenal, (E, Z)-2, 6-nonadienal, 1-octen-3-ol, (E)-2-nonen-1-ol, (E, Z)-2, 6-nonadien-1-ol, diacetyl, β-iononeであった.
1-iodoocotaneはコンブの香気に対する寄与成分の一つと推察される.

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