抄録
もし, 界面活性剤を添加することなくエマルションやマイクロエマルションのような微細粒子が調製できるならば, その液滴は高い疎水性を有する内部とクリアーかつ疎水性の高い界面を持ち, 従来のマイクロエマルション滴とは異なった物性を示すことが予想される。サーファクタントフリーエマルションは, 界面活性剤などの安定化剤が存在しないため熱力学的に不安定であり, 過飽和溶質分子による核形成や水中への有機溶媒 (溶質) の強制的な分散によって過渡的に調製される。サーファクタントフリーエマルションは, 最もシンプルな液/液分散系であるため, エマルションの成長過程や安定性機構, 液滴サイズの決定因子などの解明に有効であると考えられる。この総合論文では, 油滴の離散的な粒子径分布, 微細粒子の形成 (あるいは分散安定性) と油の粘度 (あるいは蒸気圧) との関係, SクラスとMクラス油滴の成長過程の違い, 油分子自身の構造の分散安定性に及ぼす影響, 第二油の混合のよる油滴の分散安定性などについて述べる。