抄録
Baeyer-VWger酸化は, ちょうど100年前の1899年, Alfred BaeyerとVictor Villigerによって発見された反応であり, カルボニル化合物の対応するエステルやラクトン体への変換反応として, 有機合成化学上非常に有用な反応の一つとなっている。その不斉合成反応への適用としては, 酸化酵素を用いる系がよく知られているが, 純粋に有機化学的な手法としては限られている。本総説では, それらの最近の研究例から, (1) 不斉金属触媒を利用して基質を活性化する方法, (2) 基質それ自身に不斉源を導入する方法, (3) 不斉源を導入した不斉酸化試薬を用いる方法, の三種の方法について, その特徴や有用性を紹介する。