オレオサイエンス
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総合論文
マンガン (III) に基づく酸化反応を利用した有機合成への新展開
西野 宏
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2001 年 1 巻 5 号 p. 491-501,469

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抄録

酢酸マンガン (III) は1, 3-ジカルボニル化合物と酢酸中容易に配位子交換反応を起こし, 新たにマンガン (III) -エノレート錯体が反応系中で生成する。このマンガン (III) -エノレート錯体とアルケン類を100℃以上で反応させるとエノレートがアルケンに結合した炭素ラジカルが生成し, 引き続きマンガン (III) による酸化的分子内環化を経て, 4, 5-ジヒドロフラン類が生成する。マロン酸やマロンアミドを用いてα, ω-アルカジエン類と同様の反応を行うと, 分子間および分子内環化が起こり, 二環性および三環性ラクトン類やラクタム類が得られた。オリゴメチレン=ジ (3-オキソブタノエート) 類とα, ω一アルカジエン類との同様の反応はジヒドロフラン環を2つ縮環した大環状化合物をよい収率で与えた。得られた大環状化合物のいくつかはアルカリ金属イオンを包接することが確認された。一方, マンガン (III) -エノレート錯体とアルケン類を空気下23℃で反応させると同様の炭素ラジカルがゆっくり生成し, 空気中の酸素を捕捉してペルオキシラジカルが形成される。このペルオキシラジカルはマンガン (II) によって還元されて閉環し, 1, 2-ジオキサン-3-オール類を定量的に与えた。この反応で, ピロリジンジオンやピペリドン誘導体を使うと, 窒素複素環を縮環した1, 2-ジオキサン-3-オール類が得られた。得られた1, 2-ジオキサン-3-オール類の酸触媒分解は相当する置換フラン類を与えた。一方, アザビシクロペルオキシド類のパラジウム触媒水素化分解はペルオキシ酸素の一つが取り除かれたテトラヒドロフラン誘導体を与えた。以上のことから, 1, 3-ジカルボニル化合物とアルケン類のマンガン (III) に基づく酸化反応では反応条件を制御することでジヒドロフラン類, ラクトン類, 環状ペルオキシド類などが合成でき, この反応は有機合成上有用な方法である。

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© 2001 公益社団法人 日本油化学会
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