オレオサイエンス
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総合論文
ヒドロキサム酸およびヒドロキシアジン系複素環
機能性分子の構築と化学療法剤への応用
加藤 明良
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2001 年 1 巻 6 号 p. 599-608,596

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抄録
微生物は生長に必要な鉄を捕捉するために, シデロフォアと呼ばれる低分子量の鉄イオン輸送体を分泌し, 環境中に存在する利用可能な微量の鉄を錯形成により可溶化し, 鉄イオン輸送系を介して細胞内に取り込む。これまでに200以上のシデロフォアが単離・構造決定されているが, それらはヒドロキサム酸とカテコール型に大別できる。近年, 著者らは部分骨格が環状ヒドロキサム酸あるいはカテコールとみなすことができるヒドロキシアジン系複素環の合成と鉄錯体の特性について報告した。一方, 世界中に蔓延している病気の一つである糖尿病は, インスリン依存性糖尿病 (IDDM) とインスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) に分類される。NIDDMの患者に対する薬剤はいくつも開発され実用化されているが, IDDMの患者はインスリンが経口投与できないため皮下注射に頼るしかない。そのため, インスリンに代わる経口投与可能な薬剤の開発が望まれている。近年, ある種のバナジル錯体がインスリン様作用を示し低毒性で経口投与可能であることから注目されている。本総説では, 1) ヒドロキシアジン系複素環の鉄過剰症治療薬への応用, 2) ヒドロキサム酸やヒドロキシアジン系複素環を用いた機能性分子の構築, 3) 鉄イオン輸送系を積極的に利用したシデロフォアと薬剤を連結した新しい抗生物質の開発, 4) 複素環-VO (IV) 錯体のインスリン様活性を中心に最近の研究について解説する。
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© 2001 公益社団法人 日本油化学会
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