オレオサイエンス
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1 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総合論文
  • 機能性分子の構築と化学療法剤への応用
    加藤 明良
    2001 年1 巻6 号 p. 599-608,596
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    微生物は生長に必要な鉄を捕捉するために, シデロフォアと呼ばれる低分子量の鉄イオン輸送体を分泌し, 環境中に存在する利用可能な微量の鉄を錯形成により可溶化し, 鉄イオン輸送系を介して細胞内に取り込む。これまでに200以上のシデロフォアが単離・構造決定されているが, それらはヒドロキサム酸とカテコール型に大別できる。近年, 著者らは部分骨格が環状ヒドロキサム酸あるいはカテコールとみなすことができるヒドロキシアジン系複素環の合成と鉄錯体の特性について報告した。一方, 世界中に蔓延している病気の一つである糖尿病は, インスリン依存性糖尿病 (IDDM) とインスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) に分類される。NIDDMの患者に対する薬剤はいくつも開発され実用化されているが, IDDMの患者はインスリンが経口投与できないため皮下注射に頼るしかない。そのため, インスリンに代わる経口投与可能な薬剤の開発が望まれている。近年, ある種のバナジル錯体がインスリン様作用を示し低毒性で経口投与可能であることから注目されている。本総説では, 1) ヒドロキシアジン系複素環の鉄過剰症治療薬への応用, 2) ヒドロキサム酸やヒドロキシアジン系複素環を用いた機能性分子の構築, 3) 鉄イオン輸送系を積極的に利用したシデロフォアと薬剤を連結した新しい抗生物質の開発, 4) 複素環-VO (IV) 錯体のインスリン様活性を中心に最近の研究について解説する。
  • 佐々木 善浩, 菊池 純一
    2001 年1 巻6 号 p. 609-616,596
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    脂質二分子膜中に自己組織化により組み込んだ超分子の機能を連係させることで, 分子デバイスとしての人工シグナル伝達系を設計することができる。抗体を結合したグラミシジンイオンチャネルを含む脂質膜は, 抗体の分子認識に基づいてイオンチャネルの開閉をスイッチングできるバイオセンサーとして機能した。電子受容体と電子供与体を光感応性のポルフィリン基に結合した機能分子とATP合成酵素を組み込んだ脂質膜は, プロトンポンプの機能を発現する光サイクルを経由することで, 光エネルギーをATPの化学エネルギーへ効率よく変換した。人工受容体とエフェクターとしての酵素を固定化した二分子膜型の超分子集合体は, 受容体によるシグナル認識をメディエーターシグナルを介して酵素に伝えるシグナル伝達挙動を示した。この人工超分子システムは, G蛋白質が介在する生体のシグナル伝達系を意識して設計されたものであるが, 生理活性アミンのセンシングシステムやナノテクノロジーにおける超分子デバイスを開発するための分子ロジックゲートへの応用展開が可能である。
  • 久保 由治
    2001 年1 巻6 号 p. 617-625,597
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    有機合成手法の最近の進歩により, 精密分子システムの構築が活発におこなわれている。それは, 生命現象の微視的レベルにおける理解と生体機能をヒントにした材料の開拓に対する要請に基づく。そのシステムの設計にあたり, ホストーゲスト相互作用に基づく情報リレーは特に重要である。本稿では, 主にホストーゲスト相互作用と光学機能の連携によって特徴づけられる光機能性分子システムにおける, 最近のわれわれの取り組みについてまとめる。まず, ナフタレン-チオウロニウム誘導体からなる単純蛍光センサーについて記述する。電子欠損性チオウロニウム基におけるアニオン認識情報は光誘起電子移動過程の変化を介してナフタレン蛍光部位に伝達される。第二に, 分子性フォトニックシステムに適用可能な新規色素置換型カリックス [4] クラウンを合成した。当該分子は金属イオンの入力によって, 効果的な “off-on-off” のシグナル発信をおこなう。最後に, 大環状クラウンエーテルに基づく非線形光学活性レセプターを提案する。ハイパーレーリー散乱法による物性評価の結果, 二次非線形性を示す分子超分極率 (β) はそのシステムのクラウンエーテル空孔におけるゲスト認識に連携して制御された。ホストーゲスト化学の観点から色素化分子システムの新しい趨勢が議論される。
  • 佐藤 智典
    2001 年1 巻6 号 p. 627-634,597
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    動物細胞の表層に存在するスフィンゴ糖脂質は毒素やウイルスに対する受容体としての機能を有している。生体膜モデルとして脂質単分子膜を用いた研究は、糖脂質の受容体機能の膜環境による影響、糖鎖認識性ペプチドのライブラリからのセレクションおよびインフルエンザウイルス感染阻害剤の評価に有用である事を示した。さらに、オリゴ糖鎖のライブラリーを構築するための方法としては、糖鎖プライマーを用いたバイオコンビナトリアル合成法が有用であることを示した。
  • 小林 秀輝, 天池 正登, 新海 征治
    2001 年1 巻6 号 p. 635-647,598
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    生体内の活動において, 糖はシグナル, 細胞認識の標識として重要な働きを演じている。糖構造はその特異的な水酸基の立体配座の組み合わせから, それ自身, 莫大な情報を有している。分子集合, 並びに高分子体の高次構造の制御を目的として, 我々は相互作用点として糖を用い, 分子集合を形成する系に導入した。
    我々は糖とコレステロールからなる一連のゲル化剤を合成した。ゲルの安定性, 超分子構造, そして溶媒依存性といったゲルの性質は, 糖水酸基の立体配座におけるわずかな違いによって大きく影響された。フェニルボロン酸を修飾したポリリシンは, 塩基性条件下においてアルファヘリックスを形成する。このポリリシンのさまざまな高次構造の変化が種々の糖の添加によって観察された。糖を使ったこれらの方法が, 高次構造の制御に有用であることを見いだした。糖は素晴らしい機能性物質として作用する。分子集合体の分子設計への応用するためには, また, 多くの糖の中から目的とする糖を見つけだすためには, コンビナトリアル的手法がとても役に立つであろう。
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