抄録
脂質二分子膜中に自己組織化により組み込んだ超分子の機能を連係させることで, 分子デバイスとしての人工シグナル伝達系を設計することができる。抗体を結合したグラミシジンイオンチャネルを含む脂質膜は, 抗体の分子認識に基づいてイオンチャネルの開閉をスイッチングできるバイオセンサーとして機能した。電子受容体と電子供与体を光感応性のポルフィリン基に結合した機能分子とATP合成酵素を組み込んだ脂質膜は, プロトンポンプの機能を発現する光サイクルを経由することで, 光エネルギーをATPの化学エネルギーへ効率よく変換した。人工受容体とエフェクターとしての酵素を固定化した二分子膜型の超分子集合体は, 受容体によるシグナル認識をメディエーターシグナルを介して酵素に伝えるシグナル伝達挙動を示した。この人工超分子システムは, G蛋白質が介在する生体のシグナル伝達系を意識して設計されたものであるが, 生理活性アミンのセンシングシステムやナノテクノロジーにおける超分子デバイスを開発するための分子ロジックゲートへの応用展開が可能である。