オレオサイエンス
Online ISSN : 2187-3461
Print ISSN : 1345-8949
ISSN-L : 1345-8949
総合論文
構造脂質の酵素合成
岩崎 雄吾山根 恒夫
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 1 巻 8 号 p. 825-833,822

詳細
抄録
構造脂質とは特定の脂肪酸を特定の位置に結合させたトリアシルグリセロール (TG) のことである。リパーゼは種々の構造脂質合成において強力なツールとなる。TGはその脂肪酸の種類や結合位置により, AAA, ABA, AAB, 及びABC型に分類できる。AAA型のTGは脂肪酸とグリセロールから, 化学法あるいは酵素法により合成でき, 化学量論比の基質混合物からでも100%近い収率が達成できる。AAA型以外のTGについては, 位置特異的な反応を必要とするため, 位置特異的リパーゼの使用が有効である。ABA型構造脂質は1) BBBのようなAAA型TGと脂肪酸 (または脂肪酸エチルエステル) 間での1, 3位特異的エステル交換により, 1, 3位の脂肪酸のみを置換する方法, 2) グリセロールと脂肪酸から1, 3位特異的エステル化により1, 3-ジアシルグリセロールを調製した後, 2位へ化学的に第二の脂肪酸残基を導入する方法, 3) TGの1, 3位特異的脱アシル化により2-モノアシルグリセロールを調製した後, 1, 3位を第二の脂肪酸で再アシル化する方法, のいずれかにより調製できる。AAB型構造脂質はAAA型TGの1位あるいは3位のどちらか一方のみを第二の脂肪酸で置換する事により調製できる。ある種のリパーゼはsn-1に対する反応性がsn-3位よりも高い事が知られており, この立体選択性を利用することでキラルなAAB型, ABC型構造脂質の酵素合成も可能となる。
著者関連情報
© 2001 公益社団法人 日本油化学会
次の記事
feedback
Top